7.ギターとみかん5
卒業式の朝…、この日もアイツのオセロの対戦を見守った。
私達は、やっぱりチャイムの音を聞きながら教室に滑りこんだ。
「セ~フ!」
友達のカラカイにアイツは、やっぱり返した。
答辞を読んだ卒業式でもその後の謝恩会でも涙は流れなかった。
『泣くと思ってたけどなぁ…』
いつもと変わらずアイツと一緒に寄宿舎に帰りながら思った。
『昨日の“お別れ会”でいっぱい泣いたからかなぁ…?』
寄宿舎の食堂でアイツと喋りながら、私の親の迎えを待っていた。
「とうとう、この時やなぁ…」
私は、ストーブの横でみかんの皮をむいているアイツに呟いた。
「そうやね…」
アイツは静かに応えた。
「食べる…?」
アイツは、みかんを優しく柔らかく私の手にのせてくれた。
「何で、またみかんなん…?」
「さあ…」
親が迎えに来て、私は、親に車椅子を押され食堂を出て行きけた。
「ほな、また!」
アイツは、何でもないことのように言った。
『Aグループでよかったな!』私は、強く思った。
-“ギターとみかん”終わり-
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