ともこがゆうちゃんに初めて出逢ったのは、もう何年も前の春のことでした。その頃ともこは、養護学校の寄宿舎で生活していました。
その日ともこは、部屋の中で一番陽のあたるいつもの場所で本を読んでいました。そこに青い車椅子に乗った女の子が、その子のお母さんらしい人と一緒に入ってきました。その女の子の乗っている車椅子がともこの前に止められました。
ともこは、本を読んでいた顔を少し上げてみました。その女の子は、少し緊張した感じでともこに向かって微笑みかけました。それから、緊張した少し不自由な言葉でともこに聞きました。
「名前、なんて、いうん?」
その子は目が大きくて、とても人なつっこい笑顔をしていました。
『可愛い』
ともこはそう思いました。二人は、その子のお母さんが荷物の整理をしている間にとても仲良くなりました。
ゆうちゃんは、ともこよりも一つ年下で、ともこにとっては、妹みたいでした。二人はヒマさえあれば、おしゃべりをし、遊び、とにかくずーっと一緒でした。ゆうちゃんはどんなことでもともこに相談してくれました。ともこが悲しそうな顔をしているとゆちゃんも泣きそうな顔で
「どうしたん?」
と聞いてくれました。
「大丈夫やで」
そう励ましてもくれました。二人で一緒にいると、とても楽しい気持ちになりました。
そんなある日、仲の良い二人を見ていた寄宿舎の先生がともこに、ゆうちゃんの障害が進行性だと話してくれました。ともこは、すごくショックでした。
「なんで?」
ともこがそういうとその先生は
「他の人よりは長いこと生きられへんかもしれんけど…、ゆうちゃんに楽しい思い出、たくさん作ってあげてほしいんや、そやから、あんたには知っておいてほしかったんや」
そんなふうに言ってくれました。
~つづく~
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