(これは小説です)
7.ギターとみかん4
学校での練習の時もアイツの横で歌うようになった私は、
本番での曲紹介を任されることにもなり、アイツの横で
みんなをリードすることになった。
私達は、その日から曲紹介も練習に加えることにした。
アイツのギターの練習に付き合うだけのつもりが、私の練習
にもなった。
アイツとの練習…、この時間が学校を卒業する寄宿舎を
巣立つ…、アイツと離れる淋しさを少し薄めていた。
送る会の本番は、音もきれいに出せるようになって、かっこよく
ギターをひくアイツの横で、上手く曲紹介が出来て、笑顔で
歌うことが出来た。
アイツの指に巻かれたバンドエイドが一生懸命を示していた。
数日後、寄宿舎では卒業生を送るための“お別れ会”が開かれた。
毎年、この日には開かれているのだけれど、私が高等部3年生
で開かれる“お別れ会”は、やっぱり、特別だった。
同じ学校で進級する小学部、中学部の卒業の時は、その実感は、
殆どなく、可愛がってくれたお兄ちゃんやお姉ちゃん達が
いなくなってしまうことが、ただ、淋しくていっぱい泣いていた。
だけど、今日は、卒業生の私に送られるメッセージに、
寄宿舎を離れなければいけないことの淋しさに、アイツと
離れることの淋しさにいっぱい泣いた。
『ずっとここにいたいなぁ…、もっとアイツと一緒にいたいなぁ…』
-“ギターとみかん”5へ続く-
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