(これは小説です)
5.恋と戦い3
創作劇の配役、犯人役が“アイツと車椅子の友達”に決まった。
犯人が窓口にいる銀行員にナイフを突き付けるというシーンの“ナイフを
突き付けられる銀行員の役“を決める流れになり、司会が立候補を募った。
「やりたい人いますか…?」
「はい!」
彼女の声が教室に響いた。
『あ~、そうか~!、アイツとの距離が凄く近くなるもんなぁ…!』
私には、彼女の気持ちが解ってしまった。
『私も…!』とは思ったが、何となく彼女の勢いに引いてしまった。
“犯人にナイフを突き付けられる銀行員”の役は、彼女に決まった。
私は、仲のいい友達と2人で“ナイフを突き付けられる彼女”の両側に
座っている銀行員役になった。
練習の度にアイツとの距離が近すぎる嬉しそうな彼女を彼女の隣で
見ることになった。
「ナイフ、突き付けられてるのに、何でにやけてんねん!」
『ほんまやわ!』友達の言葉に私は大きく共感した。
何度やっても、アイツが彼女の胸ぐらを掴むような仕草をする度、
彼女からは嬉しそうな雰囲気が伝わってしまう。
「もう1回やってみ!」
脚本を造った彼は、彼女からのその雰囲気が納得出来ないらしく、
そのシーンの練習を何度も繰り返していた。
-“恋と戦い”4へ続く-
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