(これは小説です)
3.幸せと戸惑い1
「ちょっと散歩行こか!」
夏の暑いの日の夕方、アイツの提案で2人で散歩に行くことにした。
アイツは私の車椅子を押して学校の裏道に入って行く。
「どこまで行くん…?」
「さぁ、まあまあ…!」
アイツは、いたずらっ子のように楽しそうに進んで行く…。
小さな木が見えた。
「あっ…、デザート食べる…?」
アイツはその木の前で車椅子を止めて笑顔で言った。
私は、何のことかとキョトンとしていた。
アイツは、そんな私を尻目に木になっている実をもぎ取った。
「何取ってんの…?」
「えっ、イチジク…!」
アイツは、笑顔で私にイチジクを渡した。
「そんなん取ってええの…?、誰かが作ってるん違う…?」
今日に限って白いトレーナーと白いキュロットの私は、“たっぷり
熟したイチジク”を手に持ったままアイツに聞いた。
「こんなとこでほったらかされてるんやし…!、大丈夫やろ!」
アイツは、自分のためにもぎ取ったイチジクを食べながら応えた。
「そうやな!」
私は、手に持ったままのイチジクを口に運ぼうとした。
“ボテッ”イチジクは、私の手を滑り、白いキュロットの上に…!
「え~、あ~あ…!」
イチジク色に染まったキュロットに私は叫んだが、それを見て
大笑いするアイツに、『まあいいか…!』と幸せな気持ちになった。
-“幸せと戸惑い”2へ続く-
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