(これは物語です)
『小さな羽根』
Ⅲ 名前のない天使8
「ミーメさん、あちらの部屋の扉は開くまで開けないで下さい」
「ええ、約束します」
「ありがとうございます、それでは…」
「ミーメ…、じゃあ…」
「ええ、行ってらっしゃい…」
ジュナとミーメはもう一度優しく微笑みを交わしました。
ジュナは、“天使”と共に廊下の突き当たりにある部屋に入っていきました。
〝バタン〟と扉が閉まると、まるでこの家にはミーメしかいないのでは
ないかと思えるほどに静まり返りました。
その日からミーメは、〝シーン〟とした家の中で過ごしました。
一人で食事をし、眠たくなると“天使”に言われた部屋で一人で眠りました。
その部屋には、ミーメが暮らしているところにある白い雲のようなものが
敷き詰められていました。ミーメは、その上に〝フワリ〟横たわり、
少し離れた部屋にいるジュナに心の中で『おやすみなさい』を言って眠りました。
家の外にも出てみましたが、“天使”が言っていたように、自分の他には誰も
いないので、家の中と同じように〝シーン〟としていました。
『ジュナ…、大丈夫よね…?』
ミーメは、今度こそ、彼の苦しみや悲しみが癒やされることを、
彼が“本当の自分の姿”になれることを祈っていました。
〝カチャッ〟ジュナと“天使”が“あちらの部屋”に入ってから7日目の朝、
扉が開きました。“天使”がミーメに静かに声をかけました。
「ミーメさん…、ジュナさんが目を覚まされました」
「えっ、はい」
「中へどうぞ…」
「終わったのですか…?」
「ええ、もう大丈夫ですよ」
ー“Ⅲ 名前のない天使9”へ続くー
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