(これは物語です)
『小さな羽根』
Ⅲ 名前のない天使5
「噂を聞いてきて下さったのですか…?」
「はい…、“エデン”の方からきました」
「それは、遠くからいらっしゃいましたね…」
家の中に入ると、“天使”の姿がはっきりと見えました。
「あの…、あなたは、気配を…?」
「ええ…、気配と色がほしいとお願いしたのですが、叶えては頂けなかったのです…」
「自分で直せるんじゃないんですか…?」
「自分の体は無理なのです…、だから…、家に細工をしたのです…、
外に出ても私の他に誰もいないので大丈夫…、でも、自分の姿が鏡にも
映らないのは…」
“天使”は小さく息を吐きました。
「“名前のない”って…?」
「ええ、ここには私しかいないので、名前なんて必要ないのです」
「神様から遠ざかるためって…?」
「神様は、私たちが何処にいても見守ってらっしゃいますよ」
“天使”は、また、小さく息を吐きました。
「ずっと、たった一人で…?」
「ええ…」
「ずっと一人で復習を…?」
「復習…?、そうですね…、復習…」
ー“Ⅲ 名前のない天使6”へ続くー
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