(これは物語です)
『小さな羽根』
Ⅲ 名前のない天使1
「もう、ジュナは、帰って来ないんじゃないか…?」
「きっと、もう、“ここ”ではない何処かで暮らしてるのよ」
仲間のそんな言葉にも耳をかすことなく、ミーメは長い間ずっとジュナを
待ち続けていました。
ジュナの姿が見られなくなって何日経ったのか、もう数え切れなくなった
ある朝、眠りから覚めたミーメに向かってジュナがゆっくり歩いてきたのです。
ミーメは、体を動かすことができずに、歩いてくるジュナをじっと見つめていました。
「ミーメ…、ただいま…」
「ジュナ…、何処へ行っていたの…?、探したのよ…!」
「ごめん…、あの日、僕のために疲れきって眠っている君を、
起こすことはできなかったから…」
「…、だけど…、こんなに長い間いなくなるなんて…」
「ごめん…、心配をかけてしまった…」
「でも、よかった、“ここ”に帰って来てくれて…」
「君は、きっと、待っていてくれるって信じていたよ…!」
「ありがとう…!、私もあなたを信じていたわ…!」
ミーメは、元気な姿のジュナを見て、彼がいなかった間の悲しみや苦しみが
スーッと消えていくのを感じました。
ジュナの瞳には、強い光が戻っていました。
ー“Ⅲ 名前のない天使2”へ続くー
PR