(これは物語です)
『おちてきた』
ちびちゃんは、家族と離れて、ちびちゃんと同じように立って歩くことが
できなかったりするお姉ちゃんやお兄ちゃんと学校の寄宿舎で暮らしていました。
みんなちびちゃんのことをとても可愛がってくれました。
寄宿舎のお部屋は、真ん中にある床に車椅子を止めて、その両側に4人分ずつ
別れて高くなっている畳のスペースに上がって過ごせるようになっていました。
1人1人のスペースには、洋服や本や文房具が入れられる棚が付いていて、
棚の下の方のスペースには開いて下ろせば机になる扉が付いていました。
ちびちゃんは、この扉を自分で開いたり閉めたりしているお姉ちゃんたちを
見ていつもかっこいいと思っていました。
『私も自分で出来るようになりたいなぁ…』
今日は、同じお部屋のお姉ちゃんに扉の開け方と閉め方を教えてもらいます。
まず、扉を開いて下ろしてみます。
「いいか、このとってを引っ張って…」
「うん!!」
「重たいし落ちて来たら危ないからちゃんと力入れて」
お姉ちゃんはそう言いながら、ちびちゃんの後ろで、扉を支えてくれていました。
だから、扉はゆっくり降りて机になりました。
今度は、扉を持ち上げて閉じてみます。
「最後までしっかり閉めんと落ちて来て怪我するからな」
お姉ちゃんは、また、ちびちゃんの後ろから扉を支えてくれました。
だから、扉はちゃんと持ち上がってしっかり閉まりました。
「ほら、出来た!、ちびちゃんすごいやん」
お姉ちゃんはそう言ってちびちゃんを喜ばせてくれました。
『やったー、私にも出来た!』
次の日、学校から帰って来たちびちゃんは、すぐにお部屋に上がりました。
『1人で開けるとこお姉ちゃんに見てもらおう!』
ちびちku樞C鵑蓮・w)ゥいて机になっている扉の前に座りました。
『まずは閉めなきゃ!』
「よいしょ!!」
ちびちゃんは、力いっぱい扉を持ち上げました。
「えっ!!、重たい!」
“がーん!!”
扉はちびちゃんだけの小さな力では閉まらなかったのです。
扉はちびちゃんに向かって落ちて来て、尖った角っこがおでこに強く当たって、
ちびちゃんはこけてしまいました。
「痛ーい!」
ちびちゃんは、おでこを手でおさえました。
『えー!!』
ちびちゃんは、自分の手に付いているたくさん真っ赤な血を見て、恐怖と痛みで
泣き出してしまいました。
「ちびちゃん!、どうしたん!?」
学校から帰って来たお姉ちゃんがおでこから血を流して泣いているちびちゃん
を見てびっくりしてすぐに先生を呼びに行ってくれました。
「ちびちゃん、大丈夫か!」
先生は、おでこにタオルを当てて、すぐにタクシーで病院に連れて行って
くれました。
「痛いやろ~、かわいそうに、もうちょっと我慢しいな」
タクシーの中で先生はちびちゃんの手を握っていてくれました。
ちびちゃんの中の恐怖は薄れて、もう泣いてはいませんでした。
『あの時は、お姉ちゃんがいてくれたから出来たんやなぁ…』
“女の子だから顔に傷が残らないように”と麻酔をせずに縫われた5針の痛みに
耐えながら、ちびちゃんはボンヤリ思いました。
-おわり-
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