(これは物語です)
『テレビこわれた!』
今日は、お父さんとちびちゃんと同じ歳の妹でお留守番です。
お母さんは、小さい妹を連れて京都に住んでいるおばあちゃんの所に
お泊まりに行っています。
お父さんが作ってくれた晩ごはんを食べて、二人で遊んで、パジャマに
着替えて、ちびちゃんと妹は、いつものように自分たちの部屋の二段
ベットで“おやすみ”しました。
真夜中、ちびちゃんと妹は珍しく目を覚ましました。
「あれ~、お父さんいない」
ベットから降りてきて妹が言いました。
“真夜中にし~んとしたお家で二人だけ”、ちびちゃんと妹はとても怖く
なりました。
妹が泣き出しました。
ちびちゃんはベットから降りて、よつばいで妹の所に行きました。
「お父さん、どこ行っちゃったのかなぁ…」
ちびちゃんも妹と同じように泣き出しました。
「もう!、真似しないでよ!」
妹が泣きながら怒って言いました。
「真似してないもん!」
ちびちゃんも泣きながら怒って言いました。
「ほら、真似してるじゃん!」
「真似してないってばぁ!」
二人は、しばらく言い合っていました。
「テレビ見よ」
やがて、妹がちびちゃんに向かって言いました。
『テレビ付けたら音とかあるから怖くなくなるかも…』
二人でテレビのある部屋に行って、妹がテレビを点けました。
次の瞬間、二人は、座ったまま凍り付きました。
「テレビこわれた!」
妹は、そう言って、また泣き出しました。
テレビの画面には、灰色の砂のようなものが映っていて、ザーッと
音がしていました。
まだ小さいちびちゃんと妹は、こんなふうになっているテレビを見た
ことがなかったのです。
二人は、思いっきり救いを求めたテレビのこの姿に大きなショックを
受けました。
「テレビ何でこわれたの…?」
ちびちゃんが小さな声で妹に聞きました。
「私、わかんないよ!」
妹は、また泣き出しました。
ちびちゃんもまた泣き出しました。
「真似すんのやめてってば!」
「だから、真似してないってば!」
二人は、また泣きながら言い合いました。
“カチャ”
言い合いが続いて、二人が疲れてきた頃、玄関のカギを開ける音が
しました。
「あっ、お父さん帰ってきた!、怒られる!」
妹はそう言うと、あわててテレビを消して、部屋に向かいました。
ちびちゃんもよつばいであわてて後をついて行きました。
妹は、“トントン”と二段ベットのはしごを昇って、寝たふりをして
しまいました。
ちびちゃんも一生懸命、早くベットに上がろうとしました。
お父さんが部屋に入ってきてしまいました。
「ちびちゃん、何してんの…?」
「オシッコ行ってたの」
「そうか、早く寝なさい」
お父さんは、ちびちゃんをベットに寝かして、お布団をかけてくれました。
『お父さん、帰ってきてよかった…!』
ちびちゃんも妹も、あんなに泣いたことも、もう遠い記憶になってしまう
ほど安心して、また二段ベットで眠りにつきました。
“テレビ画面の灰色の砂とガーッの音は、真夜中で放送が終わっていた
から”そんな訳を知るのは、ちびちゃんと妹がもう少し大きくなって
からのことです。
-おわり-
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