(これは物語です)
『帰っておいで』
ちびちゃんは、家族と離れて、ちびちゃんと同じように立って歩くことが
できなかったりするお友達と学校の寄宿舎で暮らすことになりました。
「寄宿舎入ったら、私、もう、家に帰って来れへんのかなぁ…?」
寄宿舎に行く何日か前、ちびちゃんが同じ歳の妹に言いました。
「え~、そんなことないやろ~、そんなん寂しいやん!」
「うん、でも、寄宿舎遠いみたいやし…」
「そうなん…?」
「うん、それに、お父さんもお母さんも仕事で、学校に送れへんから、
私、寄宿舎に入るんやもん」
「そうか~、学校には毎日行かなあかんもんなぁ…」
「そうやろ~、やっぱり、もう帰って来れそうにないやんなぁ、私…」
二人は黙ってしまいました。
「寄宿舎で泣いたらええやん!」
妹が、とてもいいことを思いついたみたいに言いました。
「えっ、何で…?」
ちびちゃんは、不思議に思って聞きました。
「だって、ちびちゃんが普通にしてたら、寄宿舎の人は、ちびちゃんは
ずっと寄宿舎にいても大丈夫なんやなって思うやん、でも、ちびちゃん
が泣いたら、よっぽど家に帰りたいんやなって思ってくれるかもしれん
やん!、そしたら、お母さんたちにも言うてくれて、帰って来れるかも
しれんやん、な!」
妹は嬉しそうに言いました。
「そっか!」
妹の言葉に、ちびちゃんも嬉しそうに頷きました。
寄宿舎に連れて来られたちびちゃんは、いつ泣こうかいつ泣こうかと
考えていました。
でも、寄宿舎のお姉ちゃんお兄ちゃんたちも先生たちも、まだ小さい
ちびちゃんのことをとても可愛がってくれました。
それに週末には、もう帰れないかもって思っていたお家にも帰れて、
妹たちにも会えることが解りました。
『な~んや、大丈夫やん!』
ちびちゃんは、『いつ泣こうか…』を忘れていきました。
「ちびちゃん、帰って来れてよかったな」
「うん!」
「また帰っておいでな」
「うん!」
-おわり-
PR