(これは物語です)
『テクマクマヤコン、テクマクマヤコン…。』
主人公の少女が不思議なコンパクトに魔法の言葉を唱えると、
花嫁さんや婦人警官、看護婦さんとどんな姿にも変身できてしまうという
女の子が大好きなアニメ。幼いちびちゃんも大好きでした。
『いいなぁ…、私もあんなふうに変身してみたいなぁ…』
幼いちびちゃんは、そのアニメを見ていつも憧れていました。
そしてコンパクトがほしくてたまりませんでした。
そんなちびちゃんがある日、飛び上がりそうなくらい喜びました。
お母さんが同じ歳の妹とちびちゃんに1つつずつ、あの憧れのコンパクトを
買ってくれたのです。
「やった~!!」
ちびちゃんは早速ドキドキしながらコンパクトに向かってあの魔法の言葉を
そっと呟いてみました。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、お姫さまにな~れ~」
何回か呟いてみましたが、何度やっても、コンパクトの鏡に映った
ちびちゃんは、いつものちびちゃんのままでした。
『あれ…?、みんながいるからかなぁ…?』
今度は、誰もいないところで試してみました。
ちびちゃんは、やっばりドキドキしながら、また魔法の言葉を呟きました。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン…、お姫さまにな~れ~」
でも、やっばり、コンパクトに映ったちびちゃんは、ちびちゃんのままでした。
『えっ、なんでだろう…?』ちびちゃんは、一生懸命に考えました。
今度は誰もいなくて、暗いところで試してみました。
歩くことのできないちびちゃんは、よつばいで誰もいない部屋に行って、
部屋の扉を閉めて、電気を消しました。
幼いちびちゃんは、真っ暗になった1人の部屋でちょこんと座って、
今度は少し不安になりながら、魔法のはずの言葉を呟きました。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン…、お姫さまにな~れ~」
それでも、やっばり、コンパクトの鏡の中のちびちゃんは、
ちびちゃんのままでした。
『やっばり…、なんでだろう…?』ちびちゃんは小さな体全部で
たくさんたくさん一生懸命考えました。
小さなちびちゃんは、真っ暗な部屋にちょこんと座ったままふと思って
しまいました。
『立って魔法の言葉を言わなきゃだめなんだ…』
ちびちゃんは、泣きそうになりました。
『私…、立てないもん、だから、変身できないんだ…』
ちびちゃんは、仕方なく魔法の変身を諦めてしまいました。
『立って歩ける同じ歳の妹は、ちゃんと変身できたんだろうなぁ…』
ちびちゃんは、そう思いましたが、何となく妹には、ずっと聞けないでいました。
同じ歳の妹も変身できなかったことに気づいたのは、
幼いちびちゃんがもう少し大きくなってからでした。
「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン…。」
-おわり-
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