(これは物語です)
『ほんわか』
ちっちゃいちびちゃんは家族と離れて、お友達と一緒に園で暮らしていました。
そんなちびちゃんの楽しみは、3ヶ月に一度やってくる外泊の日でした。
外泊…、そう、この日だけは、ちびちゃんもお家に帰れるのです。
そして、もっともっと嬉しいことにお家に1つ泊まれるのです。
お迎えの音が聞こえてきました。
それは、たくさんのお母さんたちのスリッパの足音です。
ちびちゃんたちが待っている部屋に響きます。
そして、園のお友達もみんな1日だけお家に帰って行くのです。
お家に帰ったちっちゃいちびちゃん、妹と遊び、お母さんがちびちゃんの
好きなものを作ってくれました。
「何が食べたい…?」
と聞いてくれたお母さんをちょっぴり、がっかりさせてしまったこともありました。
「きゅうりの塩もみ!」
ちびちゃんは、よく、そう応えていたのです。
1日だけの外泊はすぐに終わります。
そして…、ちびちゃんがまた園に帰る日がやってくるのです。
家族みんなでちびちゃんを園まで送って行ってくれました。
それでも、ちびちゃんは、とても沈んだ気持ちです。妹とお話していても、
何だか寂しい気持ちになってしまいます。
そして…、とうとう園に着いてしまいました。
その日は、いつもの外泊の時よりも園に着くのが少し遅くなってしまいました。
他のお友達はもうみんな食堂で夕食を食べていました。
お母さんがちびちゃんを食堂まで連れて行ってくれました。
「じゃあね、またくるからね」
そう言ってから、お母さんは、その日の夕食に付いていたヤクルトを手にとって
「よし!、今日はサービス!!」
と言ってフタを開けてくれました。
そして、ちっちゃなちびちゃの手に「はい…」
と優しく渡してくれました。
ちびちゃんは、そのお母さんの優しい声と手に心がほんわかなりました。
「じゃあね、またくるからね」
お母さんはもう一度ちびちゃんにそう言って、スリッパの足音を響かせて、
ちびちゃんのいる食堂を出て行ってしまいました。
食堂に残されたちびちゃんは、いつものようにとても寂しかったけど、
その日は、いつまでも心がほんわかしていました。
-おわり-
PR