(これは物語です)
『パンダのおしり』
「また…、おしり…」
おとなになったちびちゃんは、ガラスの向こうのパンダにため息まじりに思いました。
ちびちゃんが初めてパンダを間近で見たのは、まだ幼い頃でした。
お父さんとお母さんに、妹たちとパンダのいる動物園に連れて行ってもらいました。
車椅子のちびちゃんは、よく見られるようにとロープの中のガラスのすぐ近くまで
入れてもらいました。ちびちゃんのいるところよりも離れたロープの外には、
たくさんの人が笑顔で歩いていました。ちびちゃんは何だかパンダと一緒に
みんなに見られてるみたいでした。
その時、パンダは、ちびちゃんにずっとおしりを向けていました。
「あ~あ、おしりしか見えなかったなぁ…」
ちびちゃんは、ちょっとガッカリでお家に帰りました。
それから、ちびちゃんはおとなになって、今度は友達とパンダのいる
動物園に行きました。幼い頃のようにガラスの近くまで入れてもらいました。
今度は同じ車椅子の友達と一緒に見ました。またまたパンダのおしりを…。
『どうして、いつもおしりなんだろう…?、どうして、前を向いてくれないんだろう…?』
ちびちゃんは、考えました。
「私が来る時、いつもおしり、なんやけど…」
一緒に見ていた車椅子の友達に言ってみました。
「たまたま違うか…」
友達は事も無げにサラリと応えてくれました。
「そうか…、パンダにとっては、正面とか関係ないもんな…」
「うん…、たまたまパンダはあっち向いてるだけやて…」
「そっか~、勝手にこっちが正面って思ってるだけやんなぁ…」
「そうやて、パンダは向きたい方向いてるだけやで…」
「そうやな、私が反対側から見たら顔見えるやろしなぁ…」
ちびちゃんは、の~びり動くパンダのおしりを見ながら友達とこんな話をしました。
-おわり-
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