(これは物語です)
『おるすばん』
その日、お母さんがちびちゃんのちっちゃな妹に言いました。
「今日は、ちびちゃんと一緒におるすばんしてあげてね」
ちっちゃな妹は可愛い笑顔でお母さんに言いました。
「いいよ、ちびちゃんのカップラーメンも作ってあげる!」
「うん、お願いね!」
お母さんは出掛けていきました。
ちびちゃんと妹は、おうちの中で2人になりました。
しばらく2人で、ゲームをしたり、テレビを見たりしていました。
お昼になりました。
「ちびちゃん、お腹すいたね」
「うん!」
「今、ごはん作るね!」
妹はそう言って、棚の中からカップラーメンを取りだしました。
2つのカップのフタを開けて、2つのカップに具とスープの元を入れました。
そして、電気ポットに湧いているお湯を2つのカップに注ぎました。
「もうちょっと待ってね」
妹はちびちゃんにそう言って、2つのカップのフタを閉め、
小さな積み木を1つずつフタの上に載せました。
それから、3分待って、2人でカップラーメンをおいしく食べました。
“ピンポーン“
2人でテレビを見ていると、玄関のチャイムが鳴りました。
妹が玄関の覗き穴を覗きに行きました。
「あ、もっちゃん!」
妹は、玄関を開けて、もっちゃんに言いました。
「今日は、遊べないねん」
「なんで…?」
「何でも、今日はだめ、ごめんね」
妹はそう言って玄関を閉めました。
「いいの…?」
ちびちゃんは部屋に戻ってきた妹に聞きました。
「うん、今日は、おるすばんだから!」
しばらくすると、窓の外からもっちゃんの声が聞こえてきました。
「ねぇ、遊ぼう!」
妹は、口に指をあてて“しーっ”っと言って窓の外を様子を伺いました。
『妹は、歩けない私とおるすばんを頼まれたから、自分がおうちにいて
あげなきゃって思ってるのかなぁ…』
とちびちゃんは思いました。
「ねぇ、遊ぼうよ!」
また、もっちゃんの声が聞こえてきました。
妹は、また、外の様子を伺いながら、今度は窓のカーテンを閉めてしまいました。
その様子を見てちびちゃんは、妹に言いました。
「遊びに言ってもいいよ」
「もう、今日はだめって言ったから行かないよ!」
妹はちびちゃんに小さな声でそう言いました。
また、しばらくして、妹が窓の外を見ると、もう、もっちゃんはいませんでした。
「帰っちゃったみたい…、よかった!」
ちびちゃんは、そんな妹を見ていて思いました。
『ごめんね…、ありがとう』
でも、その時のちびちゃんは、その言葉を妹に伝えることが何故かできませんでした。
-おわり-
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