(これは物語です)
『おにぎり』
お母さんのおにぎりは、まるい形をしていて、のりで包んであって、
おっきいのです。中に入っているのは、“梅干し”、“しゃけ”、“こんぶ”です。
おにぎりは、お弁当箱の“たまごやき”や“ウインナー”とは別に
アルミホイルに3つ包んであります。
お弁当の時、包んであるナフキンをほどくと、お弁当箱と一緒におにぎりの
アルミホイルがコロンと転がります。
他の子のおにぎりは、ちっちゃくて可愛くて、“たまごやき”や
“たこさんウインナー”と一緒にお弁当箱の中におしゃれに並んでいます。
ちっちゃいちびちゃんは、遠足や運動会の時には、いつも思っていました。
『私も、あんな、ちっちゃくて可愛いおにぎりがいいな…』
ある遠足の朝、ちびちゃんはお弁当を包んでいるお母さんに聞いてみました。
「なんで、おにぎり、おっきいの…?」
「大きい方が食べやすいでしょ」
お母さんは、そう言うと忙しそうにちびちゃんの遠足の準備をするために
隣の部屋に行ってしまいました。
おっきくなったちびちゃんは、お昼のお弁当を食べている時、
何故かお母さんのおっきいおにぎりを思い出しました。
『あのおっきいおにぎり食べたいな…』
ちびちゃんは、おにぎりをにぎっているお母さんの姿を思い出して、
何だか“ほわっ”とした気持ちになりました。
『ちっちゃい私が食べやすいように大きくにぎってくれてたんやね、
ちっちゃい私が持ちやすいように、のりで包んでくれてたんやね、おにぎり…』
『あんなおにぎり作るのお母さんだけだったよ、おいしかった…』
「ごちそうさま」
お昼のお弁当を食べ終わった後、ちびちゃんは、声に出して言ってみました。
『今度お母さんに“あのおっきいおにぎり”作ってもらう』
ちびちゃんは、運動会や遠足の朝の“たまごやき”と“ウインナー”が
焼けていくおいしそうな匂いも思い出していました。
-おわり-
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