(これは物語です)
『にわとり』
ちびちゃんは、ちびちゃんと同じように立って歩くことができなかったり
する子供が学ぶ学校に通っていました。
ちびちゃんは、お昼休みに中庭に出るのがとても嫌でした。
でも、お昼休みには、みんな中庭に出て遊ぶことになっていて、ちびちゃん
も先生に車椅子を押されて中庭に出されてしまうのです。
ちびちゃんがお昼休みに中庭に出たくない理由、それは、学校の中庭で
飼っている“にわとり”でした。
ちびちゃんは、にわとりが怖くて仕方ありませんでした。
にわとりのあの真っ赤なトサカと目、首をふって歩く姿と木の枝のように
細い足が本当に怖かったのです。
にわとり小屋とちびちゃんがいる場所は離れていて、にわとりが小屋に
入っていれば、ちびちゃんは中庭に出ても平気でした。
だけど、お昼休みの中庭では、お友達の男の子が小屋の鍵を開けて、
にわとりを小屋から外に出すのです。
外に出されたにわとりは、中庭を歩き回ります。
ちびちゃんにとってはそれだけでも恐怖でしたが、歩くことのできる
男の子は、にわとりを捕まえようと追いかけ回します。
にわとりは中庭をあちこち逃げ回ります。
『こっちに来ないで!』
ちびちゃんは心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてしまって、体も
固くなってしまいます。
いつちびちゃんの目の前に来るかわかりません。
にわとりを捕まえた男の子は、まだちびちゃんの恐怖に追い討ちを
かけます。
ちびちゃんのいる所の側にある非難用の滑り台の上からにわとりを
滑らせるのです。
「ココココ~」
とんでもない鳴き声でにわとりが滑り台の上から落ちてきます。
ちびちゃんは、もう叫び出しそうです。
ちびちゃんは、車椅子を動かすことはできますが、早く動かすこと
はできませんでした。
「おしっこ!」
ちびちゃんは、側にいた先生に言いました。
先生は、ちびちゃんをおトイレに連れて行き、便器に座らせて
くれましたが、おしっこなんて出ませんでした。
だって、にわとりから逃れるためにとっさに出た言葉ですから…。
先生は、ちびちゃんを便器に座らせたまま中庭に戻り、またしばらく
して便器に座っているちびちゃんを見に来てくれました。
「どう…?、おしっこ出た…?」
「ううん、まだ…」
ちびちゃんは、にわとりが小屋に戻るタイミングを考えていました。
“にわとりが怖いから教室の中に入りたい”なんて言っても、きっと
聞いてもらえないでしょう…。
『おしっこって言ったら、先生が絶対におトイレに連れて行って
くれる、そしたらここから離れることができる』
ちびちゃんは、恐怖の中でとっさにそう思ったのです。
「どう…?、もう出た…?」
「うん、出た」
次に先生が来てくれた時、ちびちゃんは中庭に戻ることにしました。
中庭に戻ると、男の子は教室に戻っていて、にわとりは小屋に
戻されていました。
『あ~、よかった~』
ちびちゃんは心から思いました。
少ししてお昼休みも終わって、ちびちゃんも教室に戻りました。
その後も男の子がにわとりを追いかけ出すと、ちびちゃんはおトイレ
に逃げていたので、ちびちゃんのお昼休みは殆どおトイレでした。
『何で、先生はにわとり追いかけたりするの止めないのかなぁ…?』
ちびちゃんは、お昼休みのおトイレでいつも思っていました。
-おわり-
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