(これは物語です)
『ともだち』
ちびちゃんは、東京の学校から京都の学校に転校して来ました。
知ってる人が誰もいなくて、言葉も少し違って…。
知らない人と話すのがとても苦手なちびちゃんは、一人ぼっちみたいで
とても不安な気持ちでした。
「野球はどこのチームが好き…?」
「アイドルは誰が好き…?」
「食べるものは何が好き…?」
言葉のイントネーションの少し違う東京からの転校生のちびちゃんに興味が
あるようで、みんなが色んなことを聞いてきてくれました。ちびちゃんはドキドキ
しながら何とか応えましたが、中々上手くお話できませんでした。
ハンディのある子が学ぶこの学校には、勉強の時間の他に訓練の時間がありました。
少しでも体が動きやすくなるように、よつばいの練習や膝立ちの練習をしたりする時間です。
ある日の訓練の時間、ちびちゃんは一人の女の子と並んで壁に向かって
膝立ちの練習をすることになりました。
『あっ、私の近くの席にいた子だ!』
ちびちゃんは思いました。
膝立ちの練習が終わってちびちゃんがちょっと休んでいると、その子が話し
かけてきました。
「私、ゆみ、よろしくね」
「うん、よろしくね!」
ちびちゃんは、ドキドキしないで応えることができました。
「なぁ、次はどっちが長いこと膝立ちしてられるか競争しよか」
ゆみちゃんがちびちゃんに言いました。
「うん、やろうよ!」
ちびちゃんも嬉しそうに応えました。
ちびちゃんとゆみちゃんは、壁に向かって膝立ちを始めました。
ちびちゃんが突然“ガクン”と座り込んでしまい、横で膝立ちをしていたゆみちゃんも
つられて座りこんでしまいました。
「あ~、びっくりした~」
ゆみちゃんが言って、二人で大笑いしました。
思ったより長い間膝立ちがてきて、二人で“凄い”って言い合ったりもしました。
ゆみちゃんは、ちびちゃんが東京に転校してきて初めてできた“ともだち”です。
いつもお話するようになり、よく二人で大笑いするようにもなりました。
学校ことやクラスのこともゆみちゃんが色々教えてくれました。
ちびちゃんは、少しずつ学校にもなれて、話す言葉もいつの間にかゆみちゃん
と同じような言葉になっていきました。
-おわり-
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