(これは物語です)
『おかゆ』
「ちょっと熱あるね、風邪かな…?」
ちびちゃんのおでこを触ってお母さんが言いました。
「寝てなさい、あとでおかゆ作ってあげるから」
「うん…」
お母さんがちびちゃんをだっこして、ベットに寝かせてくれました。
妹たちの楽しそうに遊んでる声が小さく聞こえてきます。
『つまんないなぁ…』
ちびちゃんは、頭が痛くてしんどかったけど、しーんとしたお部屋で一人で
寝ているのはとっても淋しいと思いました。
お母さんがお部屋に入って来ました。
「どう…?、頭、痛いよね…?」
「うん…、ちょっと痛い…」
「冷たくて気持ちよくなるからね」
お母さんがそう言って、ちびちゃんに氷枕をしてくれました。
枕の中で氷の音がして、ヒヤッとしました。
「何のおかゆがいい…?、たまご…?、梅干し…?」
お母さんがちびちゃんに優しく聞いてくれました。
「たまご…」
ちびちゃんは小さく応えました。
「わかった、もうちょっと待っててね」
お母さんは、静かにお部屋の扉を閉めました。
ちびちゃんは、何だかちょっと、お母さんのたまごのおかゆが
楽しみになりました。
「ちびちゃん、お待たせ、おかゆ食べようか」
お母さんがおかゆを持って来てくれました。
小さなお茶碗に入っている、きいろくてふわっとしたおかゆをお母さんが
レンゲですくって、ふぅふぅってして食べさせてくれました。
「おいしい…?」
「うん」
「よかった…、これ食べたらもう熱下がるからね」
「うん」
「おいしそうだね、いいな、ちびちゃん」
お父さんがお部屋に入って来て言いました。
「熱がある人だけよ、ねぇ、ちびちゃん」
お母さんが笑って言いました。
「病気になったら、こんなの作ってもらえるのか~、いいな~」
お父さんの言葉にお母さんがまた笑って言いました。
「お父さんも熱、出したいの…?」
「こんなの作ってもらえたら熱出してもいいかな、なぁ、ちびちゃん」
「何言ってんのよ、ちびちゃんしんどいのにねぇ」
お母さんは、そう言いながらお布団を直してくれました。
「プリン食べる…?」
「うん」
おかゆを食べ終わるとお母さんがプリンを持って来てくれました。
「おっ、そんなのもあるのか」
お父さんが、またお部屋に入って来ました。
「もう、また、何言ってんのよ、これもちびちゃんだけよ、ねぇ」
「これもちびちゃんだけ特別か、ちびちゃん、いいな」
「もう、何言ってんのよ、お父さんは」
お母さんがまた笑って言いました。
「少し熱下がったみたいね、あとで計ってみようね」
お母さんが、ちびちゃんのおでこをそっと触りながら言いました。
何だか、ちょっと楽しくて、優しくて、暖かくて、おいしくて、
『病気になるのも何かいいな』ってちびちゃんは思いました。
-おわり-
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