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小説 サービス4

『サービス』4

「はい、今日はサービス!」
母親は、手取ったヤクルトのふたを開けて、私の小さな手に持たせてくれた。
「じゃあね、帰るからね」
母親は、まだションボリしている私の顔を覗き込んでそう言った後、
私を残して、食堂を出て行った。

「また来るからね」
幼かった私は、母親のそんな言葉も思い出し、寂しさでいっぱいだった心が、
何だか温かく嬉しくなっていくのを感じた。
その日のヤクルトは、とても甘かった。

“サービス”…、そうことかもしれない…。
どんなサービスも、“提供する人の心”、“受ける人の心”によって、どんな形
にもなるのかもしれない…。

“カチャッ”玄関の鍵が開いて、ヘルパーさんが入って来てくれた。
「おはようございます!」
「はい…」
まだ眠気に包まれたままの私に、新しい1日が始まった。

今日は、お昼過ぎには、彼がやって来る。
『一緒にお茶しに行こうかなぁ…』

-サービス終わり-












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小説 サービス3

『サービス』3

幼かった私は、同じように障害を持っている子供たちが家族のもとを離れて、
看護士さんに介護を受けながら生活し、身体の訓練を行う入所形の療育園で
暮らしていた。
そこでは、家族の面会も家族のもとへの外泊も限られていた。

その日、自宅への外泊を終え、家族と一緒に療育園に戻ってきた。
夕食に間に合うように帰ってきたが、少し遅れてしまった。
「あっ、もうごはん始まってる!」
母親は、慌てて、私の車椅子を押して食堂に連れて行った。
他の子供たちは、もう食事を初めていて、食堂の中はかなり賑やかだった。
私は、母親がもう帰ってしまう寂しさで心がいっぱいで食事をじっと見つめた
まま動くことができなかった。
母親は、そんな私を見て、食事のトレーに載っていた小さなヤクルトを笑顔で
手に取った。

「自分でやりなさい」
母親はいつもそう言って、幼くても私を甘やかすことはなかった。

-サービス4へ続く-











小説 サービス2

『サービス』2

ヘルパーさんに介護に来てもらいながら、1人暮らしをしている私。
彼と旅行に行ったりデートをしたり、2人で過ごしている時には、
彼に介護をしてもらう。
ヘルパーさんと同じように、“やってもらっている”という意識はあり、
“ありがとう”という気持ちもあるが、何となく、ヘルパーさんとは違い、
“介護されている”という意識がない。
フワリとした気持ちのままだからなのか何なのか…。
彼からよく聞く言葉“愛情サービス”は、そういうこと…?
彼にそのことを伝えると彼も“介護をしてる”という感じはないと
応えしてくれた。
私が彼のその応えに“フワリとした気持ち”になったということは、
私にとってその応えは、“嬉しい”ということでしょう…。

『そういえば…、あの時だって…』
私の頭にふと幼かった頃の“ある場面”が浮かんで、動き出した。

-サービス3へ続く-









小説 サービス1

『サービス』1

ベットの上で目を覚ます。
『そろそろ、ヘルパーさんが来はる時間かなぁ…』
眠気の残る目で頭の方の壁にかかっている時計を見たが、ド近眼の私
には相変わらず、よく見えない。
「まぁいいか…」
呟きながら、ベットの横に止めてあるピンク色の電動車椅子に目をやった。

私には、生まれた時から体に障害があり、日常生活の全てのことに介護が
ないと生きていけない。
私は、介護ヘルパーさんに来てもらい、1人暮らしをしている。

介護サービス、これから起床する私が1日の始まりにまず受けるサービス。
その後、お昼ごはん…、入浴…、トイレ…、着替え…、ヘアーセットや
メイクに至るまで1日私が受けるサービス、介護サービス…。
国の力を借りて、費用も支援を受けている。

こんな私にも
「一緒にいよう!」
そう言ってくれる大切な男性(ひと)がいたりする。

-サービス2へ続く-









小説 その奥にあるもの3

『その奥にあるもの』3

『私も障害がなければ…』
分厚くふたをされたその奥で見つけた“ソレ”をまだじっと見つめていると、
“ソレ”は、少しずつ何かの形に見えてきました。
『何…?』
少しずつ…、少しずつ…、少しずつ…少しずつ…、少しずつ…。
『えっ…?、鬼…?』
「鬼や…!」
私は声にならない声を出してしまいました。
厚くふたをされたその奥の奥に封じ込まれていた“ソレ”は、私自身に再び
見えたことで、その姿を自ら“鬼”に変えたのでしょうか…?…?、“ソレ”
が再び見えたことで、私自身が“ソレ”を鬼だと見たからなのでしょうか…?
どちらにしても、私の心の奥の“影のようなもの”は、この鬼だったのでしょう…。

私の中の“ソレ”、鬼は、命を手放すその時まで消えることはないのでしょう…?
もしかしたら…、命を手放したその後も…。

「おかえりー!、雨、大丈夫やった…?」
彼が買って来てくれたお肉で、笑顔の夕食が始まりました。
『私は幸せやなぁ…!』
私は,また鬼を封じ込めました。
でも、もう、鬼がいることは知っています。

「明日は,買い物、一緒に行こな!」
「うん!」
私は,いつもの笑顔で応えました。

-〝その奥にあるもの〟終わり-















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