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小説 ほな、また3.幸せと戸惑い1

(これは小説です)

3.幸せと戸惑い1

「ちょっと散歩行こか!」
夏の暑いの日の夕方、アイツの提案で2人で散歩に行くことにした。
アイツは私の車椅子を押して学校の裏道に入って行く。
「どこまで行くん…?」
「さぁ、まあまあ…!」
アイツは、いたずらっ子のように楽しそうに進んで行く…。

小さな木が見えた。
「あっ…、デザート食べる…?」
アイツはその木の前で車椅子を止めて笑顔で言った。
私は、何のことかとキョトンとしていた。
アイツは、そんな私を尻目に木になっている実をもぎ取った。
「何取ってんの…?」
「えっ、イチジク…!」
アイツは、笑顔で私にイチジクを渡した。
「そんなん取ってええの…?、誰かが作ってるん違う…?」
今日に限って白いトレーナーと白いキュロットの私は、“たっぷり
熟したイチジク”を手に持ったままアイツに聞いた。
「こんなとこでほったらかされてるんやし…!、大丈夫やろ!」
アイツは、自分のためにもぎ取ったイチジクを食べながら応えた。
「そうやな!」
私は、手に持ったままのイチジクを口に運ぼうとした。
“ボテッ”イチジクは、私の手を滑り、白いキュロットの上に…!
「え~、あ~あ…!」
イチジク色に染まったキュロットに私は叫んだが、それを見て
大笑いするアイツに、『まあいいか…!』と幸せな気持ちになった。

-“幸せと戸惑い”2へ続く-












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小説 ほな、また2.救いと気づき5

(これは小説です)

2.救いと気づき5

アイツは、“マッチ棒みたい”ではなくなり、スッとした。
アイツの姿やアイツの周りに流れる柔らかな空気は、アイツの持っている
障害を包み込んでいるほどだった。
だけど、友達とけんかしたり、先生に注意されたりした時のアイツは、
誰よりも苦しそうに見えた。
「なぁ…、とりあえず、謝っちゃえばいいのに…」
私の言葉に、アイツはいつも笑顔でごまかした。
「まあね、そうやね」
私には軽く返せるそんな言葉も、けんかをした友達や注意された先生には
返せなくて…、ダンマリになってしまっていた。
『悪いと思うほど言葉が出ないんだろうなぁ…』私は、その笑顔や放つ
柔らかい空気を感じ、そう思っていた。
“この人が傷付きませんように…”私は、何時の頃からかそう願うように
なっていた。

いつものように寄宿舎でのグループ活動の後、2人でいると、アイツが
みかんを私に見せて聞いた。
「食べる…?」
「うん!、食べる!」
アイツはそのみかんを私の手に乗せてくれた。
自分のみかんを出してむき始めたアイツの横顔を何となく見ていた私は、
“ドキッ”とした。
『あれ…?』私は、自分の気持ちに気づき始めた。

-“救いと気づき”終わり-
















小説 ほな、また2.救いと気づき4

(これは小説です)

2.救いと気づき4

寄宿舎では、夕食後の2時間は障害別のグループに別れての活動時間に
なっていた。
肢体不自由の私と体には障害のないアイツは、もちろん、別々のグループ
で活動していた。
私のグループでは、卵のカラと折り紙を使った張り絵で、グループ名の
“ペガサス”の巨大な看板を作ったり、みんなでお茶をしたり、編み物をしたり…。
アイツのグループでは、みんなで豆腐やおからを作ったり、マラソンや
買い物に行ったり、プロレスをしたり…。

グループの時間が終わって…、就寝時間までは自由時間、みんなそれぞれ
に過ごしていた。
私とアイツは、廊下の隅に作られた入口が透明のフィルムで仕切ってある
スペースで、2人で話をしたり、お菓子を食べたり、宿題をしたり、
試験勉強をしたり…。
その様子は、廊下から丸見えだったが、気にはならなかった。
たぶん…、アイツも…。

何時の頃からか、これが、私にとって当たり前の日常になっていた。
『アイツはどうだったのだろう…?』

この頃にはアイツは、学校でも寄宿舎でも友達の真ん中にいて、女の子にも
モテるようになっていた。
アイツのスッとした姿や“優しいんだろうなぁ”と思える笑顔は、人を引き
つける充分な魅力になっていた。

-“救いと気づき”5へ続く-








小説 ほな、また2.救いと気づき3

(これは小説です)

2.救いと気づき3

授業を一緒に受けて、“教室の移動”の時にはアイツが私の車椅子を
押してくれるようになっていた。
大体の席順は決まっていて、並んで座ることはなかったが、私の
車椅子を机の前につけ、車椅子の後ろにかけられているカバンから
必要な道具を出してくれて…、アイツは自分の席に座っていた。
授業が終わると、またアイツが私の席まで来てくれて、一緒に
次の教室へと向かった。

給食の時間には、アイツが、食べ終わるのが遅い私の所に来て、
わざと笑わせた。
私は、かなりの確率で牛乳を吹き出した。
「もう、牛乳飲んでるのに~、やめて」
飲みかけの牛乳を机に置く私に、アイツはいつも大笑いしていた。
「それ、ほぼ毎日やってるやん、毎回引っかかってるし!」
周りの友達が笑いながら言ってくる。
「も~!」
私は、ちょっとふくれて、笑いながらアイツを見た。
「行こか!」
アイツは、笑いながら友達と外に出て行った。
私は、やっと牛乳を飲み終わって、友達と喋っていた。

夕方には、放課後、訓練に残っている私をアイツが訓練室まで
迎えに来て、車椅子に乗せてくれる。
朝とは逆の道のりで一緒に寄宿舎に帰って行くのだった。

-“救いと気づき”4へ続く-









小説 ほな、また2.救いと気づき2

2.救いと気づき2

学校でも寄宿舎でも毎日笑い転げて、しばらく絶った頃、後輩の2人が
寄宿舎を出ることになった。
学校では、相変わらず、4人で連んでいたが、登校、下校はアイツと
私の2人になった。

朝、ごはんを食べた後、アイツはいつもオセロをしていた。
私は、アイツが誰かと対戦しているのを隣で見ていたが、気が気では
なかった。
「ほんまに、もうアカンて、遅刻する!」
「大丈夫やから」
焦りまくっている私をよそにアイツは、オセロを続ける。
「行くで!」
対戦の決着が着くとアイツは、私の車椅子を押して走り出す。
食堂を出て、寄宿舎の出入り口に置かれた小さなスロープを下り、
学校へと続く大きなスロープを上って、すぐの角を曲がる。
教室に到着した途端に、ホームルーム開始のチャイムが鳴る。
“キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン”
「お前ら、また遅刻やん!」
「ぎりぎりセ~フ」
友達のカラカイにアイツが大声で返し、私達は席についた。

私達の朝はいつもこんな感じだった。

-“救いと気づき”3へ続く-












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