(これは小説です)
8.公衆電話と白い車1
卒業式が終わって何日か過ぎた。
『春休みじゃないんやな、寄宿舎に帰ることもないんやな…』
私は、家に帰って来てから、朝起きる度に思った。
『4月からは施設での生活…、やっていけるんかなぁ…?』
不安な気持ちが私を淋しさの底へ連れていった。
そんなある日、アイツが後輩2人といきなり私の家に来た。
「どうしたん…?」
突然のことに私は、ツッケンドンに聞いてしまった。
「えっ、ヒマやし…!」
アイツが言うと、後輩達が続けた。
「俺らもヒマやったし、付いて来てん!」
4人で、近くの百貨店まで遊びに行った。
買い物をして…、ゲームセンターでゲームをして…、
レストランでごはんを食べて…。
時間をいっぱい楽しんだ夕方の帰り道。
3月の下旬、少しずつ暖かくなってきたけれど、この時間に
なると、寒くなった。
「なぁ…、俺らは歩いてるから寒ないけど、車椅子やったら
寒いんちゃうか…?」
後輩がそう言って、自分が着ていた上着を私にかけてくれた。
「ありがとう!」
私は、その優しさに心から暖かくなった。
-“公衆電話と白い車”2へ続く-
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