(これは物語です)
『手のひら』1
私は、生まれた時から体に障害がありました。
おとなになった私は、1人暮らしを始めました。
私には、朝ベットから車いすに座るにも、着替えをするにも、
トイレをするにも、ごはんを作って食べるにも、外出するにも、
の中に入るにも、テレビを付けたり消したりするにも、車いす
からベットに寝るにも1日の全てのことに介助が必要です。
だから、私の家には、朝起きてから夜寝るまで交代でずっと
ヘルパーさんがきてくれます。
1人暮らし…?、そう、それでも私は、1人暮らしです。
“カチャ”、朝、玄関の鍵が開いて、私の家の中にヘルパーさん
が入ってきました。
「おはようございます」
ヘルパーさんが、私の寝ている寝室に入ってきて、まだ意識の
ハッキリしない私の着替えを始めてくれました。
『はぁ…』
私は、小さなため息をつきました。
着替えが終わって、ベットから車椅子に移してもらって、洗面所
で歯を磨いてもらって、顔を洗ってもらって、化粧水をつけて
もらった私は、朝食を食べさせてもらうためにリビングのテーブル
の前に連れて行ってもらいました。
ヘルパーさんがポストから持ってきてくれたテーブルの上のチラシ
の文字が、顔を洗ってもらって意識がハッキリしてきた私の目に
映りました。
“…ヘルパー無料お試しキャンペーン開催中”
『ん…?』
チラッと見えたその文字にとても心惹かれてしまった私は、
朝食の準備をしてくれているヘルパーさんに、そのチラシを私の方に
近づけてくれるようにお願いしました。
チラシは私の目の前に置かれ、その文字はハッキリ見えました。
“アンドロイドヘルパーお試しキャンペーン開催中”
「何だろう…?」
私は、声に出して呟いていました。
ー“手のひら2”へ続くー
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