(これは物語です)
『こころ』
彼女は、彼とケンカをしてしまいました。
と言っても言い合いになった訳ではありません。
彼は興奮している彼女を見つめながら、何も言わないで、彼女の話をじっと
聴いていました。
彼女が怒ることになった理由は、「片付けておいて」と彼女が彼に頼んだ物が
どこにあるのかわからなくなってしまっていたことでした。
大したことではありませんでした。
だけど、その時の彼女は冷静になることを忘れてしまっていました。
『何であんなに怒っちゃったんだろう…』
興奮が治まった彼女のこころには後悔が流れてきました。
そして、彼女は、興奮と怒りに支配されて、暴力的になり、大好きな彼に怒りを
ぶつけてしまったあの時のこころを覗きました。
「自分で、すぐ確認できないからはがゆいの!、ちゃんとしてて!」
あの時、彼女が彼に吐いてしまった言葉を、混乱していた彼女のこころは、
『体の不自由な私のこと、もっとちゃんと見ててくれるのが当たり前でしょ!』
そう変換してしまいました。
彼を愛しているのに、自分が彼にそんな気持ちを持っていることに彼女は
悲しみを感じました。
やがて…、彼女のこころは彼女に教えてくれたのです。
あの時に彼女が彼に吐いてしまった言葉は、彼を攻めたりするためのものでは
なく、『彼を愛する気持ちがあるから、彼に自分のはがゆさをわかっていて
ほしい』そんな気持ちが隠れていたことを…。
彼は、あのケンカの後も変わらない笑顔を向けてくれます。
『ありがとう…』
彼女のこころは幸せでいっぱいです。
そして、『愛しているのに気持ちをぶつけてしまう、愛しているからわかって
ほしい…。』彼女はそんなこころにも揺れています。
-おわり-
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