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小説 『初恋1』

『初恋』 (これは小説です。)

1.再会

7月を迎えたばかりのある日、それは偶然でした。
「あれ…?、みき…?」
突然のその声にみきは少しビクッっとなりました。
みきが運転していた電動の車椅子の後ろには、おとなの顔をしたのぶが
乗った手動の車椅子が止まっていました。
「姉さんやん、久しぶり!」
のぶは、あの頃よくふざけてみきを呼んでいたように、
くったくのない笑顔で声をかけてきました。
「のぶ…?、オッサンになったなぁ…」
「もう、俺も、24やからね」
「え~、24て」
「そりやあ、俺も、もう、オッサンやし」
「びっくりやわ」
「姉さんは、変わってへんなぁ」
「また~、ウソやん」

日常の中での突然の再会と何の気ない会話が二人の心にあの頃、
セピア色の日々を思い起こさせたのでしょう…。
「姉さん、暇なん…?」
「まあ、何にもないけど…」
「俺も何んもないし、どっかでお茶でもしぃひん…?」
「そうやな、いいよ」
二人は車椅子で入れる喫茶店を探しました。

少し広めの喫茶店を見つけ、テーブルに向かい合って座りました。
「俺、コーヒー、姉さんは…?」
「あっ、私、紅茶」
「じゃ、コーヒーと紅茶一つずつ」
ウエイトレスに伝えてくれたのぶにみきは、ほのかに『おとな』を感じました。
「なぁ…、のぶって、そんなに『おとな』やったっけ…?」
「だから、もう、24ですって!」
「そうか…、そうやんなぁ…」
「姉さんは幾つになりましたん…?」
「それ聞く…?」
「はい、一応、知りたいなって!」
「ふーん、一応、あの頃からずっと、きみより4つ上…!」
「と、いうことは…、28…か…」
「こら、こら、ダイレクトに答えを出さない!」
「あっ、これは、失礼しました!」
「ほんま、失礼やわ~」
「いや、でも、あの頃とほんま、あんまり変わってへんから…!」
「いやいや、だから、うそやろ…?って」
「ほんまですって!」
「だって、あの頃って、私、中学生やったし…」
「えっ…、ってことは、俺、まだ小学生やったってことっすか…?」
「そうやで」

あの頃…、もう、おとなになった二人の間に、懐かしい光景が映像に
なって湧き上がってきました。


-『初恋』2へ続く-






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