(これは物語です)
『小さな羽根』
Ⅰ 小さな羽根の天使8
「ねぇ、ジュナ…、あなたは泣いたことないの…?」
「いや…、子供の頃には泣いたよ」
「私、あなたの涙、見たことないわ…」
「ミーメと出逢う前かなぁ…」
「今は泣かないの…?」
「ああ…」
「どうして…?」
「悲しいことがたくさんあって、泣いたって仕方ないって思ったら、いつの間にか…、泣けなくなってたんだ…」
ミーメは、自分の鼓動が聞こえそうなほど、ドキッとしました。
ジュナが一度だけ、ミーメに涙を見せたことがあります。
それは、ミーメがジュナの苦しみ、悲しみを見ていることに耐えられなくなり、ジュナの元を去うとした時です。
「私、もう、あなたを見ていることが耐えられないの…」
「…、ミーメ、ずっと一緒にいてほしいんだ…!」
ミーメを見つめるジュナの瞳からは涙が零れ落ちました。
初めてジュナの涙を見たミーメはその時、ジュナが自分を必要としてくれていることを本当に理解し、彼に二度と涙を流させてはいけないと心から思いました。
「ごめんなさい…、もう、泣かないで、私、ずっと一緒にいるわ…」
「ありがとう…」
ジュナは笑顔を見せてくれました。
ミーメは涙を流しながら、ジュナの笑顔を見つめました。
「子供の頃、約束したもの、私がずっとあなたを守るって…」
「ありがとう…、僕もミーメを守りたい…」
ー“Ⅰ小さな羽根の天使9”へ続くー
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