『僕のいもうと』8
二十歳を随分過ぎて私は、自宅で暮らすことになりました。
福祉用具を使ったり、家族に協力してもらいながら、生活で必要な動作の
大体のことは自分の力でこなせるようになっていました。
障害を持った人たちが介助を受けながら働くことのできる所に毎日通い、
仕事をしながら暮らしていました。
彼氏とデートしたり、友達とごはんを食べに行ったり、旅行に行ったり、
映画を見に行ったりして過ごせるようになっていました。
そんな私は、ある日、クラスメートの○○くんが亡くなったことを、
同じクラスメートの友達から聞きました。
「えっ…?」
私は、驚いて、握っていた電話を落としそうになりました。
「いつも散歩に行って道で電動車椅子ごと田んぼに落ちて、顔、
上げられへんかったみたいやって…、帰って来いひんからって、
お母さんが探しに行かはって見つけはったって聞いたけど…」
私は、○○くんのはにかんだような笑顔を思い出しました。
「僕あかんわ~」
○○くんの声聞こえた気がしました。
『卒業してからも言うてたんかなぁ…』
「そんなことないよ!」
お兄ちゃんの優しい声と笑顔が浮かんできました。
『お兄ちゃんは知ってるのかなぁ…?』
その後、お兄ちゃんが結婚したことを風のうわさで知りました。
あの日々は、今でも私の心を癒やしてくれます。
-僕のいもうと終わり-
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