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小説 ほな、また8.公衆電話と白い車1

(これは小説です)

8.公衆電話と白い車1

卒業式が終わって何日か過ぎた。
『春休みじゃないんやな、寄宿舎に帰ることもないんやな…』
私は、家に帰って来てから、朝起きる度に思った。
『4月からは施設での生活…、やっていけるんかなぁ…?』
不安な気持ちが私を淋しさの底へ連れていった。

そんなある日、アイツが後輩2人といきなり私の家に来た。
「どうしたん…?」
突然のことに私は、ツッケンドンに聞いてしまった。
「えっ、ヒマやし…!」
アイツが言うと、後輩達が続けた。
「俺らもヒマやったし、付いて来てん!」

4人で、近くの百貨店まで遊びに行った。
買い物をして…、ゲームセンターでゲームをして…、
レストランでごはんを食べて…。

時間をいっぱい楽しんだ夕方の帰り道。
3月の下旬、少しずつ暖かくなってきたけれど、この時間に
なると、寒くなった。
「なぁ…、俺らは歩いてるから寒ないけど、車椅子やったら
寒いんちゃうか…?」
後輩がそう言って、自分が着ていた上着を私にかけてくれた。
「ありがとう!」
私は、その優しさに心から暖かくなった。

-“公衆電話と白い車”2へ続く-














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小説 ほな、また7.ギターとみかん5

7.ギターとみかん5

卒業式の朝…、この日もアイツのオセロの対戦を見守った。
私達は、やっぱりチャイムの音を聞きながら教室に滑りこんだ。
「セ~フ!」
友達のカラカイにアイツは、やっぱり返した。

答辞を読んだ卒業式でもその後の謝恩会でも涙は流れなかった。
『泣くと思ってたけどなぁ…』
いつもと変わらずアイツと一緒に寄宿舎に帰りながら思った。
『昨日の“お別れ会”でいっぱい泣いたからかなぁ…?』

寄宿舎の食堂でアイツと喋りながら、私の親の迎えを待っていた。
「とうとう、この時やなぁ…」
私は、ストーブの横でみかんの皮をむいているアイツに呟いた。
「そうやね…」
アイツは静かに応えた。
「食べる…?」
アイツは、みかんを優しく柔らかく私の手にのせてくれた。
「何で、またみかんなん…?」
「さあ…」

親が迎えに来て、私は、親に車椅子を押され食堂を出て行きけた。
「ほな、また!」
アイツは、何でもないことのように言った。

『Aグループでよかったな!』私は、強く思った。

-“ギターとみかん”終わり-















小説 ほな、また7.ギターとみかん4

(これは小説です)

7.ギターとみかん4

学校での練習の時もアイツの横で歌うようになった私は、
本番での曲紹介を任されることにもなり、アイツの横で
みんなをリードすることになった。
私達は、その日から曲紹介も練習に加えることにした。
アイツのギターの練習に付き合うだけのつもりが、私の練習
にもなった。
アイツとの練習…、この時間が学校を卒業する寄宿舎を
巣立つ…、アイツと離れる淋しさを少し薄めていた。

送る会の本番は、音もきれいに出せるようになって、かっこよく
ギターをひくアイツの横で、上手く曲紹介が出来て、笑顔で
歌うことが出来た。
アイツの指に巻かれたバンドエイドが一生懸命を示していた。

数日後、寄宿舎では卒業生を送るための“お別れ会”が開かれた。
毎年、この日には開かれているのだけれど、私が高等部3年生
で開かれる“お別れ会”は、やっぱり、特別だった。
同じ学校で進級する小学部、中学部の卒業の時は、その実感は、
殆どなく、可愛がってくれたお兄ちゃんやお姉ちゃん達が
いなくなってしまうことが、ただ、淋しくていっぱい泣いていた。
だけど、今日は、卒業生の私に送られるメッセージに、
寄宿舎を離れなければいけないことの淋しさに、アイツと
離れることの淋しさにいっぱい泣いた。
『ずっとここにいたいなぁ…、もっとアイツと一緒にいたいなぁ…』

-“ギターとみかん”5へ続く-















小説 ほな、また7.ギターとみかん3

7.ギターとみかん3

“送る会”の学年の出し物が“ギターでの伴奏で、みんなで歌う”になり、
ギターの伴奏がアイツに決まった日の夜の“いつもの時間”からギター
の練習は始まった。
「歌があった方がやりやすいから、横で歌って!」
ギターのチューニングをしながらアイツが言った。
「えっ、私が…?、私が歌うん…?」
「うん、そう!」
「私が…?、1人で…?」
「えっ、僕のギターに合わせてやけど」
「だけど、歌うのは、私1人なんやろう…?」
「えっ、当たり前やん、ここに他に誰もいいひんやん」
「え~、無理やし…、聞いとくし」
「えっ、そんなん、意味ないし、自分も練習になるやん!」
何やかんやアイツに押されて、私はアイツの横で歌うことになった。

「ちょっと待ってや…!」
最初は、アイツの聞かれながら1人で歌うことに緊張していたけれど、
何度も練習を重ねていると、アイツの横で自然に歌えるようになって
いった。

「練習しよか…?」
「うん、ええよ!」
この会話が私達の間で何度も交わされて、練習は進んでいった。

練習の度に痛んでいく指のために、アイツは、ビックを使ってギターを
ひくようになった。

-“ギターとみかん”4へ続く-














小説 ほな、また7.ギターとみかん2

(これは小説です)

7.ギターとみかん2

毎年、卒業式前になると高等部では、“卒業生を送る会”という
イベントが行われる。
“送る会”では在校生は卒業生を送る意味で、卒業生は在校生への
お礼の意味で、学年ごとにそれぞれ出し物をすることになっていた。

去年までは送る立場だった私達は、今年は卒業生…、とうとうお礼の
出し物をする立場になった。

「何か提案はありますか…?」
司会者の問いかけに寸劇やその他の提案もあったが、話し合いの結果、
誰かがギターで伴奏して、みんなで歌を歌うことになった。
「べたやなぁ…」
賛成はしたものの、私は思わず机に向かって呟いた。
「それでは、次は、伴奏をする人を決めます!」
司会者は、私の呟きをよそに次の議題へと進んだ。
「ギター、ひける人はいますか…?」
再びの司会者の問いかけに、アイツがスッと手を挙げた。
『えっ…?、そう言えば、寄宿舎の先生に教えてもらってたな』
歌の伴奏者は、賛成多数でアイツに決まった。

『かっこいいしな…!』私は、ギターを教えてもらってる時のアイツの姿を
思い出した。

「ギターの練習、付き合ってな!」
2人で寄宿舎へと帰る時、アイツが言った言葉に、私はちょっとドキッとした。

-“ギターとみかん”3へ続く-















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