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小説 ほな、また9.異常な空間と当たり前な空間1

(これは小説です)

9.異常な空間と当たり前な空間1


私の双子の妹が結婚することになった。
母から電話があって、“結婚式の当日は、家族が私を施設に迎えに
行けないから、アイツに式場に連れて来てもらって、また施設に
連れて帰ってもらえないか”と言われた。
「聞いてみるわ」

アイツは、心良く引き受けてくれた。
結婚式の朝、アイツがいつもの車で迎えに来てくれて、私は式場に
向かうことが出来た。
結婚式に出席出来ることは嬉しかったが、妹が、私には障害があって
難しいと思っている花嫁になることで、私とは違う場所に行ってしまう
ようで、何とな~く淋しくて心が沈んでいた。

式場に着いて、アイツは、式が終わるまでどこかで待っていてくれる
ことになった。
「かなり長くなるやろうけど…、大丈夫…?」
「別に…、コーヒーでも飲んで待っとくし!」
「うん、わかった、ありがとう」

妹の控え室で式に出席するための衣装に着替えさせてもらいながら、
花嫁衣装に着替えさせてもらっている妹と話した。
「綿帽子ええなぁ…」
「そうか~、なんかオバQみたいじゃない…?」
「そんなことないって、きれいやって」
「そう…?、ありがとう」

沈んでいた心が少し明るくなった。


-“異常な空間と当たり前な空間”2へ続く-









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小説 ほな、また8.公衆電話と白い車5

(これは小説です)

8.公衆電話と白い車5

いつの間にか私達は、アイツの車で外出するようになっていた。
外出届けの同伴者の欄にはアイツの名前を書いて提出した。
時々、後輩や高校生の時に劇の脚本を作った彼がアイツと一緒に
来て、一緒に出掛けることもあった。
そんな時も外出届けの同伴者はアイツの名前だった。
「また彼氏とデート…?」
詰め所に外出届けをもらいに行くとよく聞かれた。
「うん、かな…?」
私は時々、、わざとその問いを本当のことのようにしてみた。

アイツと電車に乗って出掛けたある日、駅で高校生の時の先生に
声をかけられた。
「何してんの…?」
「えっ、買い物」
アイツがサラリと応えた後、先生は私達に向かって言った。
「あんたら、まだやってんの」
「えっ、何が…?」
「だって、あんたらいつも連んでたやん!、付き合ってんの…?」
「えっ、何が…?」
アイツはごまかすためか、同じ言葉を繰り返し、私は久しぶりに
会った先生の無神経な問いに心で応えた。
『もう、ふられてるって!』

-“公衆電話と白い車”終わり-














小説 ほな、また8.公衆電話と白い車4

8.公衆電話と白い車4

職員に呼ばれて電話に出ると、アイツの声が聞こえてくる。
「下に来てるんやけど」
解っている言葉でも、私の心はパっと明るくなった。
私は、施設に入所してから使い始めたモーターが付いた“電動車椅子”を
運転してエレベーターで1階に降りた。
最初は、アイツが上に上がって来てくれて一緒に下に降りていたが、
詰め所で書かされる面会簿がオックウになったのか、職員に声を
かけて私を呼んでもらうのがオックウになったのか、いつの間にか
下にある公衆電話から私に電話をかけてくるようになった。

長い廊下を進み、外に繋がる扉が見えると、公衆電話の横にアイツが
立っている。
「長いこと待った…?」
「いや、あんまり…」
「そうかっ、よかった!」
アイツが自動販売機で缶ジュースを2つ買ってベンチに座り、
オレンジジュースのプルトップ開けて、ベンチの隣にいる電動車椅子
の私に渡してくれて、私達は時間を過ごす。
アイツが私を笑かそうとして、私がジュースを吹き出しそうに
なったり、アイツの仕事の話を聞いたり、私の話を聞いてもらったり、
時には高校生の頃の思い出話をしたり…、また新しい“いつもの時間”
になっていた。

-“公衆電話と白い車”5へ続く-















小説 ほな、また8.公衆電話と白い車3

(これは小説です)

8.公衆電話と白い車3

施設での生活は、朝起きて仕度をして…、洗濯機を回して…、
ごはんを食べ…、洗濯物を干して、午前中の作業をこなし…、
ごはんを食べ…、午後の作業をこなし…、洗濯物を取り込んで…、
余暇の時間を過ごし…、ごはんを食べ…、余暇時間を過ごし…、
8時には4人部屋の自分の部屋で就寝準備を始めて…、
9時にはベットで自分のテレビにイヤホンを付けて見る…、
11時には消灯…、職員が部屋を廻ってきて“おやすみなさい”…。
休日は、午前と午後の作業はなく、ボランティアや友達、
介助をしてくれる人同伴の外出、外泊を許されていた。
門限は夜の8時で、夕食の始まる5時までに帰って来られ
なければ、外出先で食べて帰らなければならなかった。
外出・外泊の予定の一週間前には届けを出し、親に電話して
許可を取らなければならなかった。
同伴者は自分で食堂の公衆電話で電話をかけて探していた。

-“公衆電話と白い車”4へ続く-









小説 ほな、また8.公衆電話と白い車2

(これは小説です)

8.公衆電話と白い車2

私を家まで送ってくれて、4人で何となく喋っていた。
私は、ちょっと気になってたことをアイツに聞いてみた。
「なぁ…、就職どこに決まったんやっけ…?」
「えっ、仕出屋やけど…!」
「そうかっ、がんばってな!」
「うん!」

“そろそろ帰ろう”と3人が立ち始めた時、アイツが私に聞いた。
「なぁ…、4月から行く施設の場所って解るん…?」
「うん、解るけど…、ちょっと待ってな」
私は、母に聞いて、アイツに施設の住所と地図を教えた。
アイツは、それをやっぱり優しく柔らかく受け取って、後輩と
一緒にサラッと帰って行った。
「ほな、また」

学校を卒業して…、寄宿舎を巣立ち…、毎日一緒にいられなく
なったらアイツともお別れだと思っていた。
だけどアイツは、自分の気持ちで、わざわざ会いに来てくれた。
淋しさに沈んでいた私の心に嬉しさの光が射し込んだ。

“ほな、また…”アイツの未来に繋がるその言葉が嬉しかった。

-“公衆電話と白い車”3へ続く-













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