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小説 ほな、また10.ミルクティーと後悔1

(これは小説です)

10.ミルクティーと後悔1

8年いた施設を出て自宅で生活していた。
全て介助してもらっていた施設の頃とは違い、日常生活の動作は、
ほぼ自分で出来るようになった。
家族と自分自身の力、やらなければならない気持ちが大きな後押しになった。

障害を持った人が通う授産所に送迎バスで毎日通い、パソコンで文字の入力
や、名刺などを作る仕事をして、他の同じような所より少し高めの工賃を
もらっていた。

『そうや…!、電車に乗ってどっか行ってみよう…!』
夕方、仕事から帰って来ると家には誰も帰っていなかった。
私は、電動車椅子で電車に乗って出かけてみようと考えた。
電動車椅子を運転しての遠出も初めてで、歩道の上がったり下がったりや、
上ってたどり着いた先に車が止まっていたり、降りれないほどの段差かも
しれないのが怖くて車道の端っこを走った。
すると、車の音が耳のすぐ横で聞こえて怖かった。
それでも、何とか駅にたどり着き、駅員さんに手伝ってもらって電車に
乗ることが出来た。
『やったー!』

-“ミルクティーと後悔”2へ続く-















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小説 ほな、また9.異常な空間と当たり前な空間5

(これは小説です)

9.異常な空間と当たり前な空間5

電話を受けて、アイツの待つ“下”に降りて行った。
しばらく話していると、アイツが写真を見せた。
そこには知らない女の子が写っていた。
「えっ…、誰…?」
私のサラっとした問いにアイツもサラっと応えた。
「えっ、彼女」
「付き合ってんの…?」
「だから、彼女やって…!」
「若いやろ…?」
「かなり年下…、ええ子やで!」
『彼女つくるんや…』
ショックというよりも意外だった。
コミュニケーションの苦手なアイツ、彼女をつくろうとはしないやろうと
私は勝手に思っていた。
『アイツには、当たり前のことやのに…、失礼よな…』
アイツは、ただ、友達の私に自分に彼女が出来た嬉しさを報告に来て
くれたのだろう。
「この前の洋服屋さんに連れて行ってるのもこの子なん…?」
「うん!」

アイツが後輩と突然私の家に来てくれたあの日から、学校を卒業して、
一度終わった時間がまた新しい時間に繋がったのだろう。

数ヶ月後、“彼女と別れた”と友達の私に報告に来てくれた。

-“異常な空間と当たり前な空間”終わり-










小説 ほな、また9.異常な空間と当たり前な空間4

(これは小説です)

9.異常な空間と当たり前な空間4

アイツに洋服を買ってもらって、ゲームをして…、色んなお店を
見て…、夜ごはんを食べた。
「時間ヤバいなぁ…、間に合うかなぁ…」
「まあまあ…、別に殺される訳やないやん!」
「まあ、それもそうかっ!」

施設に帰り着くと門限の8時はとっくに過ぎていた。
「やっぱり、遅れたな」
「まあまあ…!」 
アイツが私の気持ちを明るくしようとしてくれているのか、
少しふざけるようにそう言って、車椅子を押して自動ドア
の中に入った。

職員が私に近づいて来て言葉を零した。
「お帰り、おしっこは…?」
『えっ…!』
私の心はひいた。
『アイツがまだ後ろにいるのに…!』
職員は後ろのアイツに気づいていないのか、更に続けた。
「出えへんの…?、なら、お部屋行こか!」
連れて行かれそうな私にアイツが言った。
「ほな、また」

『殺されるよりひどいなぁ…!』

-“異常な空間と当たり前な空間”5へ続く-












小説 ほな、また9.異常な空間と当たり前な空間3

(これは小説です)

9.異常な空間と当たり前な空間3

2人で出かける日、アイツが施設に迎えに来てくれた。
他の入所者の珍しいモノを見るような視線を感じながら、
私はアイツに抱えられて車の助手席に座った。
アイツが車椅子をトランクに入れて、車が走り出すまで
視線はこちらに向けられていた。

ボランティアとは違う人が迎えに来て、車で出かけて行く
ことは、この施設では珍しいことだった。
「普通に友達と出かけてるだけやのになぁ…」
私は、運転しているアイツに呟いた。
「気にせんでええやん」
アイツは、何でもなく返してきた。

繁華街に着いて、ある洋服屋さんに入ると、“あっ!、あの人!”
と言う感じで店員さんが笑顔で近づいて来て、アイツに言った。
「今日は、妹さんですか…?」
アイツにいるのは“お姉さん”と知っていた私は、その言葉に
違和感を感じた。

「なぁ…、“今日は妹さんって何…?」
私は、小さくアイツに聞いた。
「まあまあ…、今日は服買ってあげるから…、好きなん
選んで!」
『そんな人を連れて来てるお店に私も連れて来るって…!』
アイツの態度にのどまで出かけた言葉を私は飲み込んだ。
『私がそんなこと言うのもおかしいよな…、私、友達やし…』
そんな思いに先導されて、私は好きな服を選び続けた。

-“異常な空間と当たり前な空間”4へ続く-











小説 ほな、また9.異常な空間と当たり前な空間2

(これは小説です)

9.異常な空間.と当たり前な空間2

“親族のかための杯”、結婚式、披露宴が終わってアイツが迎えに
来てくれた。
「お願いね」
母がアイツに言った。

アイツは、私を車の助手席に座らせて、車椅子を畳んでトランク
に入れた。
トランクの閉める音がした後、アイツが運転席に乗って来た。
「夜ごはんどうすんの…?」
アイツがこっちを振り返って聞いた。
「私…、お腹すいてないけど…」
「どうしたん…?、元気ないやん…」
妹が離れて行ってしまうような感覚は、やっぱり私の中から消えて
いなかった。
「ごはんおごるわ」
アイツは、そんな私にハンバーグをおごってくれた。
「ありがとう、ごめんな…」
「大丈夫!」

施設に到着すると、アイツはトランクから車椅子を下ろし、
助手席から私を抱き上げて車椅子に乗せてくれた。
「元気だしや、ほな、また」
アイツは、そう言って自動ドアを出て行った。

「次は、あんたやで!」
披露宴の時に花嫁姿の妹が言ってくれた言葉は、ずっと私の心に
残っていた。

-“異常な空間と当たり前な空間”3へ続く-












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