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ショートストーリー16箱

ショートストーリー16


『箱』

村の長老は、神に召されるその時に若者に言いました。
「この村の外れにある箱の蓋は、決して開けてはならない、もし開けてしまったら、
争いの心が溢れ出し、村は滅びてしまう」
「はい、必ず守っていきます!」
若者は、長老に誓いました。

かつてこの村では、自分たちの力を示そうと村人の間で争いがおきていました。
やがて、争いは大きくなって、力を持たない幼い子らの命まで奪ってしまうように
なっていきました。
かつての長老は、嘆き悲しみ、自分の命と引き換えに村人たちの争いの心を
箱に封じ込め、村人たちが足を踏み入れることのない村の外れに埋めたのです。
村人たちから争いの心は消え、村は穏やかになりました。
かつての長老は、神に召されるその時、若者に伝えました。
「決して村の外れにある箱の蓋を開けてはならない」と…。
「開けてしまったら争いの心が溢れ出し、村は滅びてしまう」と…。

かつての長老が神に召されて何十年、村は穏やかでした。
長老から若者へと箱のことが伝えられ、その若者が長老になって、若者に伝え、
村では、また、何十年も争いはおこりませんでした。
この村では、誰も争うことなど考えなくなっていきました。

また、何十年も経って、村では、伝えられている箱を実際に見たことのある者は
誰もいなくなりました。
それでも、“開けてはならない箱”のことは、長老から若者へとずっと伝え
られていました。

ある時、長老から箱のことを伝えられた若者は考えました。
『箱を開けてはならないと伝えれば、誰も箱を開けたりはしないのだから、
何も“村が滅びてしまう”などと恐ろしいことを伝える必要はないのでは…?、
それにそんな箱が本当にあるのかもわからない…』
若者は、長老になって、若者に箱のことを伝える時、「決して村の外れにある箱の
蓋を開けてはならない」とだけ伝えました。
その後、長老から若者へは、「決して村の外れにある箱の蓋を開けてはならない」
とだけ伝えられるようになっていきました。

そのうち、「箱の蓋を開けたら何がおこるんだろう」「どうして箱の蓋を開けては
ならないのだろう…?」そんなことを言い出す者が出てきました。
「箱が本当にあるのかを確かめに行かないか…?」と言う者もいましたが、
村の外れまで行く者は誰もいませんでした。
“村の外れにある箱の蓋を開けた者は、真の勇者になれる”という噂まで広がり
始めました。

少年は、美しい少女に恋をしました。
だけど、少年は、少女を遠くから見つめるばかりでした。
「お前みたいな臆病者に彼女が振り向く訳がないだろう!」
友達は、少年の様子を見ていつも少年をからかいました。
少年は、悔しくて悔しくて一生懸命考えました。
『そうだ…!、“開けてはならない箱”の蓋を開けてやろう…!、そして、
彼女に気持ちを伝えるんだ…!』

少年は、一人で、何日も何日も何日も何日も、歩いて歩いて歩いて歩いて、
村の外れに辿り着きました。
何日も何日も何日も何日も、穴を掘り、探し続け、とうとう小さな箱を見つけ
ました。
『これが…、“開けてはならない箱”…?、本当にあったんだ!』
少年は、小さな箱を確かめるように手に持ちました。
『この蓋を開けて、箱を持って帰れば、僕は、勇者になれる!』
少年は、箱の蓋を開けてしまいました。

少年は、自分に力が宿ったように思いました。
『僕は、村で一番強いんだ!、僕の力を見せてやる!』
少年は、ここに辿り着いた時の何倍もの速さで、争いの心を持って村に帰って
行きました。

何十年も穏やかだった村には、争いの日々が戻りました。
争いはどんどんどんどん大きくなって、村は、かつての長老が言ったように
滅びてしまいました。


-おわり-















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