(これは物語です)
“うみと”はその日、朝から飼い主さんの足元に、いつもより、ずっとまとわりついていました。
「何してんの…!」
飼い主さんは、洗濯物を干しに窓を開けてベランダに出ました。
“うみと”は、“お兄ちゃん”の写真をちょっと見て、“ミャオーン、ミャオーン”と声を出しました。
『お兄ちゃん、外にいるのかなぁ…?』
もう一度、“ミャオーン”と声を出して、窓の方を見ました。
『あっ、開いてる!』
窓は、“うみと”の体が通るくらい開いていました。
ベランダで洗濯物を干していた飼い主さんの足元をすり抜けて、
“うみと”は外へ出て行きました。
飼い主さんは、一瞬のことで、家から飛び出した“うみと”を捕まえることが
できませんでした…。
しばらくは、どこか近くで“ミャーミャー”声が聞こえていましたが、
小さい体の“うみと”どこに隠れているのか判りませんでした。
そのうちに、声も聞こえなくなりました。
“うみと”は、病院と美容院以外では、外に出たことはありません。
1匹だけで出るなんて、生まれて初めてです。
「うみとー!、うみとー!」
飼い主さんは、心配してあちこち探しましたが、“うみと”は見つかりませんでした…。
ひょっとしたらと、窓を開けたままにして、帰ってくるのを待っていたりもしましたが、
何日待ってみても“うみと”は帰って来てくれませんでした。
「“うみと”、お兄ちゃん、探しに行ったのかなぁ…?」
飼い主さんは呟きました。
家の中には、“やまと”も“うみと”もいなくなってしまいました。
ー“ねこ”終わりー
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