(これは物語です)
『サンタクロースへのプレゼント』
ー少女は、コートを着た1人のおじいさんに、声を掛けました。ー
「すみません、ジャングル公園は、どこですか…?」
『えっ、あっ、いや、知らんのじゃが…』
ーおじいさんは、驚いて、少女を見ました。ー
『あんた、ひょっとして、わしが見えるのか…?』
「えっ、“見えるのか”って…?」
ー少女は、おじいさんの言葉に立ち止まりました。ー
『いや、実は…、わしは、サンタクロースなんじゃよ』
「えっ、おじいさんが…?、ほんとに…?」
『信じてもらえんよな…』
「あっ、違うの、サンタクロースって、ほら、赤い服と帽子で…」
『近ごろ、信じない者が多いからな』
「だから、どんな格好をしていてもいいって…?」
『そうじゃな…、わしらは、わしらを信じる者にしか見えんからな…』
「だから、赤い服も帽子も着てないの…?」
『まぁ、そういうことかな…』
「今日はクリスマスよ、プレゼントは…?、トナカイのそりは…?」
『今は、もう、わしらのプレゼントを欲しがる者はおらんよ、最近は、
飛行機も飛んで、そりは危なくてしょうがない…』
「そうなの…?」
『わしがそりでプレゼントを配るより、航空便の方が早いじゃろ…』
「でも、クリスマスの主役は、サンタクロースじゃないの…?」
『クリスマスはな、生まれた命を祝う日なんじゃよ』
「知ってるわ、そうよね…」
『近ごろは、誰もが、忘れとるようじゃがな』
「そうね…、街はカップルで溢れて、道路はあちこち渋滞だらけで、
ホテルはカップルたちの予約でいっぱい…、おまけに、
クリスマスに恋人がいないと、世の中に置いて行かれたみたいで、
その日の為に恋人を探したりして…『そうじゃな…』
「でも、やっぱり、クリスマスにサンタクロースがいないと淋しいわ」
『ありがとう…、嬉しいよ』
「私ね、サンタクロース信じてるって言ったら、笑われるの」
『そうか…』
「私、サンタクロースに会ったってみんなに言うわ」
『みんなは、信じてくれんかもしれんよ…』
「大丈夫よ、今日、おじいさんとお話したことを教えてあげれば…、
そうしたら、みんなにもサンタクロースが見えるようになるでしょ!」
『そうじゃな!』
「ちゃんと赤い服に帽子のサンタクロースでいてね!」
『わかった!、ありがとう、わしも信じてみることにするよ!』
「私、きっと、おじいさんに、たくさん信じる心をプレゼントするわ!」
『もうもらったよ、あんたの信じる心をな!』
「私も、もらったわ、おじいさんにプレゼント」
『えっ、わしは、まだ何も…』
「クリスマスにサンタクロースに会えるなんて最高のプレゼントよ!」
『そうか、ありがとう!』
「とってもうれしいわ!」
『わしもじゃよ!』
「きっと、また会えるわよね…?、私たち」
『ああ、わしも、そう願っているよ…!』
「またいつか…、ね!」
『ああ…、またいつか…、じゃな!』
「サンタクロースさん!、メリークリスマス!」
『ありがとう…、メリークリスマスじゃ!』
-おわり-
PR