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小説 『初恋5』

(これは小説です)

5.交際

喫茶店で、思っていたより長い時間話して、二人の心の距離は、少しずつ、
あの頃みたいに近づいたように感じました。
「みきは、今、誰かいるん…?」
のぶのいきなりの呼び捨てにみきは、ドキッとしました。
だから、分かっていながら聞いてしまいました。
「えっ…?、誰かって…?」
「付き合ってる人とか、好きな人とか…」
「ん~、今はフリー、誰もいいひんよ…」
「俺も今、誰もいないし、頑張ってみいひん…?」
「頑張るって…、付き合うってこと…?、私たちが…」
「うん、そう、一応、俺は告白した訳やし…」
「そうか~」
「で、みきの返事は…?ってこと!」
「いいかな…、二人とも一人じゃ淋しいし、頑張ってみよか」
「俺、障害者派やし!」
「ほんなら、私、射程圏内やもんな!」
「うん、そう!」

二人は、喫茶店を出る時には、交際を始めたカップル、ということに
なっていました。
あの頃よりもおとなになった幼なじみ、“初恋の人”と
言われた自分、みきはそんな甘いシチュエーションに誘われるように、
自分がこれから始めようとしていることに心地よさを感じていました。
「じゃ、またな!」
「うん、また!」

「俺んとこの寮で夏祭りがあるから、みき、きたら…?」
「夏祭り…?、そんなんあんの…?」
「うん、出店とかも出るし、結構、楽しいで!」
「でも、私、かなりの方向音痴やからたどり着けるかなぁ…?」
「俺、駅まで迎えに行くし、大丈夫!」
「ありがとう…、じゃあ安心して行くね!」
みきはのぶの寮の夏祭りに行きました。
二人で出店をまわり、色んなものを食べました。
「俺、ジュース買ってくるから、喉、かわいたやろ…?」
「うん、かわいた!、ありがとう!」
のぶを待っている間に、みきの高校時代の同級生のひろがみきを見つけて
近づいてきました。
「あれ…?、みきやん、久しぶりやな!」
「あっ、久しぶり…、何でひろにここで会うん…?」
「だって俺は、ここの工場で働いてるし」
「そうやったっけ」
「みきこそ、なんで、ここいるん…?」
その時、のぶが缶ジュースを二つ持って、こちらに向かって車椅子を
こいできました。
「お待たせ~!」
その声にひろが振り返りました。
「あれ…?、のぶやんか、なんやお前らそういうことなん…?」
「はい、まあ、そういうことっす!」
「へ~、そうか、みき、年下がいいんや…」
「別に、そんな訳じゃないけどさっ!」
「まぁ…、いいやん、仲良くしろや…」
「はい、まだ、始めたとこっすけど!」

のぶと会う日に、みきが、ただ思いついて、
腕時計を買ってプレゼントしたりもしてみました。
「えっ、ありがとう!」
「うん、いいよ、選ぶの結構、楽しかったしさっ」
「俺も今度、何かプレゼントするよ」
「ありがとう!、楽しみにしてるね」

二人の交際は、ゆるやかに、ただ、続いていました。
何がある訳でもなく、ただ、何となく…。


-『初恋』6へ続く-









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小説 『初恋4』

(これは小説です)

4.想い

「姉さんは…、付き合うんやったら健常者派…?、障害者派…?」
突然の告白タイムから空気の流れを変えたのは、のぶのそんな言葉でした。
みきは、あまり聞き慣れない響きに違和感を感じてしまい、
少し大きめの声で聞き返してしまいました。
「何…?、健常者派、障害者派って!」
「健常者と付き合わなお互いに大変とか、付き合ってることにならへんとか、
お互いにヘルパーがいたら何かと大変やとか、逆に障害者同士やないと、
やっぱり、解り会えへんとか」
「へ~、そんなこと言ってる人たちもいるんや」
「俺とこの寮では、結構、話題になってますけど…」
「ふーん、私は、そんなこと考えて付き合ったことないなぁ…」
「何か、姉さんやな~、そういうとこ…」
「そう…?、だって、たまたま好きになった人がその時その時で、
健常者やったり…、障害者やったりするし…」
「どっちとも付き合ったことあるんすか…?、姉さんは」
「うん、あるよ」
「そうっか~、で…?」
「で…って、どっちと付き合っても、いいとこもあったし、悪いとこもあったし…、
で、のぶは…?」
「えっ…?」
「のぶはどっち派なん…?」
「結局、知りたいんすねっ」
「まあ、一応、参考までに!」
「では、参考までに、俺は、障害者派」
「ふーん、何でなん…?」
「ん~、やっぱり俺は、障害者同士の方が解り会えるって思うし」
「そうなんや…」
「どんなに頑張っても、同じ境遇の者同士じゃないと難しいっすよ」

みきは、のぶのこの想いに不思議な違和感とふわっとした寂しさを
ゆるやかに感じました。


-『初恋』5へ続く-




小説 『初恋3』

(これは小説です)

3.告白

ウエイトレスが運んできたコーヒーと紅茶を飲みながら、二人は話していました。
「どうでもええことで、よく熱くなったよな、俺たち、ガキみたいに」
「ガキみたいって、ほんまにガキやったやん」
「まあな、俺なんか、小学生…」
「意味なく楽しかったよな~」
「とにかく、よく一緒にいたよな」
「何で、何が、あんなに楽しかったんやろ…?」
「何でって、寂しいこと言うやん、姉さん」
「そう…?」
「一応、俺は、姉さんが初恋やったんすけど…」
「えっ、うそっ、あの頃…?」
「はい…、初めて、これが女の子を好きになるってことかなぁ…って思ったっていうか…」
「そうなんや…」
「そうなんやて、全く気づいてなかったんすかっ…?」
「うん、だって、まさかやん!」
「ちょっとは気づいてくれてるかと思ってました…!」
「ごめんな、どんかんやねん、私、なぁ、これって告白…?」
「あっ、そうかも…、です…ね…」

『…そう言えば、私も、ドキドキしたことあったなぁ…』みきは、すっかりおとなになったのぶと、少女の頃のちょっと心地よい思い出と、突然の告白に、記憶の奥に沈んでいた気持ちを微かに思い出していました。


-『初恋』4へ続く-





小説 『初恋2』

(これは小説です)

2.思い出

何故か気があっていた中学1年生のみきと小学4年生ののぶは
今の特別支援学校に隣接されていた寄宿舎で生活していました。
リズムが合うような…、気持ちが軽くなるような…、二人でいると
妙に楽しさを感じられて、みきとのぶは二人でいることがよくありました。
話をしてはゲラゲラ笑い合ったり、長い廊下の端から端まで四つばいで、
どちらが先に行けるか競争したり、とても楽しい思いに包まれていました。

いつもの廊下で二人が競争をしていると、一人の女の子がそれを見つけて
何故か二人に怒ってきました。
「二人だけでこんなとこにいたら、あかんのに!」
のぶがみきの横に座り、言い返しました。
「遊んでるだけやのに、何であかんねん!」
「男の子と女の子やんか!」
「それが、何であかんねん!」
「あんたら、好き同士なんやろう…?」
「はぁ~?、何のこっちゃ、行こ、みき」
のぶは、急にみきの手を引っ張りました。
「あっ…、うん、行こ」
みきは何だかドキドキしながら、のぶと同じ四つばいでのぶの後を
ついていきました。


-『初恋』3へ続く-




小説 『初恋1』

『初恋』 (これは小説です。)

1.再会

7月を迎えたばかりのある日、それは偶然でした。
「あれ…?、みき…?」
突然のその声にみきは少しビクッっとなりました。
みきが運転していた電動の車椅子の後ろには、おとなの顔をしたのぶが
乗った手動の車椅子が止まっていました。
「姉さんやん、久しぶり!」
のぶは、あの頃よくふざけてみきを呼んでいたように、
くったくのない笑顔で声をかけてきました。
「のぶ…?、オッサンになったなぁ…」
「もう、俺も、24やからね」
「え~、24て」
「そりやあ、俺も、もう、オッサンやし」
「びっくりやわ」
「姉さんは、変わってへんなぁ」
「また~、ウソやん」

日常の中での突然の再会と何の気ない会話が二人の心にあの頃、
セピア色の日々を思い起こさせたのでしょう…。
「姉さん、暇なん…?」
「まあ、何にもないけど…」
「俺も何んもないし、どっかでお茶でもしぃひん…?」
「そうやな、いいよ」
二人は車椅子で入れる喫茶店を探しました。

少し広めの喫茶店を見つけ、テーブルに向かい合って座りました。
「俺、コーヒー、姉さんは…?」
「あっ、私、紅茶」
「じゃ、コーヒーと紅茶一つずつ」
ウエイトレスに伝えてくれたのぶにみきは、ほのかに『おとな』を感じました。
「なぁ…、のぶって、そんなに『おとな』やったっけ…?」
「だから、もう、24ですって!」
「そうか…、そうやんなぁ…」
「姉さんは幾つになりましたん…?」
「それ聞く…?」
「はい、一応、知りたいなって!」
「ふーん、一応、あの頃からずっと、きみより4つ上…!」
「と、いうことは…、28…か…」
「こら、こら、ダイレクトに答えを出さない!」
「あっ、これは、失礼しました!」
「ほんま、失礼やわ~」
「いや、でも、あの頃とほんま、あんまり変わってへんから…!」
「いやいや、だから、うそやろ…?って」
「ほんまですって!」
「だって、あの頃って、私、中学生やったし…」
「えっ…、ってことは、俺、まだ小学生やったってことっすか…?」
「そうやで」

あの頃…、もう、おとなになった二人の間に、懐かしい光景が映像に
なって湧き上がってきました。


-『初恋』2へ続く-








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