(これは物語です)
「2.こすもす」
ー7.ありがとうー
あたしは、きっと、知っていたの
「おはよう」
ぼくちゃんの元気な声には、もう、ゆらゆら応えてあげられないこと
あたしの命は、土の中から出たら、消えてしまうこと
あたしの力は少しずつ消えていってるの…
風は、静かに止まったの…
風は、少しずつ冷たくなってきているの
短いあたしの季節は、命は、終わりに近づいているの
だから、あたし、ぼくちゃんのそばにいきたかったの
ぼくちゃんは、命が消えていくあたしとずっとずっといてくれたの
あたしは、その力が消えていくまでぼくちゃんに伝えたの
〈ありがとう…〉あたしを見つけてくれて
〈ありがとう…〉あたしとお話してくれて
〈ありがとう…〉淋しさ教えてくれて
〈ありがとう…〉やさしさくれて
「ここならきみはひとりぼっちじゃないね」
あたしは、ぼくちゃんの声と、原っぱいっぱいのお花を感じたの
このお花は、きっと…、あたしと同じ“こすもす”でしょう…
あたしは、消えていく命を感じながら
〈またね〉
ぼくちゃんに、小さく、呟いたの
ぼくちゃん…、ありがとう…
少し冷たくなってきた風が、またやさしく吹いていたの…
ー“大好き18”へ続くー
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