(これは物語です)
『メリーゴーランド』
彼女は幼い頃、メリーゴーランドに乗せてもらったことがあります。
彼女と同じ歳の妹は一人でかっこよく馬に乗っています。
妹とは違い、体の不自由な彼女は馬車に乗せられました。
彼女の隣にはお母さんが座って体を支えてくれました。
キラキラした音楽と光の中、妹はかっこよく一人で馬に乗って、
彼女とお母さんの乗っている馬車に向かって手を振っています。
『いいなぁ…』
幼い彼女には、お姫様みたいな馬車に乗っている自分よりも、
一人で馬に乗っている妹がうらやましく見えました。
おとなになった彼女はふと思いました。
『メリーゴーランドに乗りたいなぁ…』
だけど今度は、妹が一人で乗って手を振っていたあの馬じゃなくて、
お母さんと乗ったお姫様みたいなあのキラキラした馬車に…。
おとなになった彼女の隣には、お母さんではなく、愛おしい彼が
座ってくれるでしょう…。
キラキラした音楽と光の中、手を繋いでニコニコお姫様と王子様
みたいに馬車に乗る二人の姿が彼女の心には見えています。
-おわり-
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