(これは物語です)
『ボコボコ…、ボコボコ…』
彼女は、まだ真っ暗な部屋のベットの上で目を覚ました。
ベットの横にある窓の外からは、激しい雨の音に混じって
“ガヤガヤ”と人の声が聞こえます。
『何だろう…?』
“ボコボコ…、ボコボコ…”
お風呂場の方から異様な音が聞こえてきます。
『えっ…、何…?、排水口…?、水、溢れてんの…?、何で…?』
彼女は、団地全体に放送されてる声に気づきました。
「…ました、避難して下さい…!」
『えっ、避難って…、何がおこってんの』
雨の音と、反響している音の広がりで、放送の内容がよく
聞こえませんでした。
『え~、どうなってんの~、何がおこってんの~』
真っ暗な家の中には彼女一人、それを彼女に教えてくれる人は
いませんでした。
“ガラガラガラ…、ゴロゴロゴロゴロ…”
リビングの方から物が動くみたいな音が聞こえ出しました。
ベットの上で体を動かすことのできない彼女に徐々に解ってきた
ことは、“自分は何か避難をしなければいけない危険な状況にある
けれど、誰にも気づかれていないかも知れない”ということでした。
『大きな声を出し続けたら、誰かが気づいてくれるかもしれない!』
今、自分を助けるための唯一の手段は、声を使うことでした。
「ワー!、ワー!、ワー!、ワー!、ワー!ワー!、ワー!…」
彼女は、一番大きな声が出せそうな発音で声を出し続けました。
『ああ…、ダメだ…、人間てこうやって死んで行くんかなぁ…』
“ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン”
「大丈夫ですか~!」
どれくらい経ったのか…、ドアを叩く音と声に彼女は応えました。
「大丈夫なんですが、何がおきているのかわからないんです!」
「鍵は開けられますか…?」
「私、ベットの上にいるんですが、自分で動けないんで、鍵を開けに
行くことができないんです、何がおきてるんですか…?」
「ちょっと待って下さいね」
彼女がここにいることに誰かが気づいてくれました。
-彼女のストーリー15
『コワイー!コワイー!コワイ…!』へつづく-
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