とうとう、ゆうちゃんが寄宿舎からいなくなる日が来てしまいました。
「ゆうちゃーん、お母さん来はったよー」
その声はとても悲しく響きました。
二人が部屋に行くとゆうちゃんのお母さんがもう荷物の整理をしていました。二人は、ゆうちゃんが初めてこの部屋に来たあの日と同じように、車椅子を向かい合わせて座っていました。でも、ゆうちゃんは笑顔を見せてはくれませんでした。二人とも黙って下を向いていました。
その時、ゆうちゃんのお母さんがともこに言ってくれました。
「ともちゃん、ゆうちゃんとお友達になってくれてありがとう、前に行ってた学校は、元気な子が通う学校の中にある、ハンディを持つ子のクラスで、中々友達が出来ひんかってね、そやから、こんなに仲良い友達出来たん初めてでね、「友達できてん」ってゆうちゃん凄く嬉しそうに話してくれたんよ、ずっとここにいられたらよかったんやけどね、ありがとうね、また遊びに来てやってね」
「はい」
ともこは、お母さんに向かってそう言うと、ゆうちゃんに
「そうや、またゆうちゃんとこに遊びに行ったええねん、そしたら、また逢えるやんか、また逢いに行くわな」
そう言って微笑みました。
「うん」
ゆうちゃんは小さく頷いただけでした。
「ほんまにありがとうね、そしたら、ゆうちゃん、行こか」
お母さんがゆうちゃんの車椅子を押そうとした時、ゆうちゃんが
「バイバイ、また逢おな」
小さな声でそう言いました。
「うん、また逢おな…」
~つづく~
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