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小さな羽根Ⅳ天使の苦悩9

(これは物語です)

『小さな羽根』


Ⅳ 天使の苦悩9


「ミーメさん、一つ聞いていいかしら…?」
「ええ…、何でしょうか…?」
「ジュナさん、羽根は一度も外されてないのですか…?」
「羽根を…?、外す…?」
「ええ…、契約書の書注意に書いておいたのですが…」
「契約書に…?」
「ええ、契約書は…?」
「ジュナが持っているはずですが…」
「あなたは読んでいないのですか…?」
「ええ、少し目は通させて頂きましましたが…」
「やはりそうですか…」
「えっ…?」
「あ…、いえ、お話をお聞きしていると、ジュナさんもやはり、
見落とされたのでしょうね」
「何か大事なことが…?」
「はい、『羽根は時々取り外して下さい』と…」
「えっ、気づきませんでした、だから、あんなに腫れ上がって…?」
「ええ、あの羽根を付けている間、ジュナさんの背中には異物が当たって
いることになります、長い間当たっていると、そこには炎症や腫れ、そして、
痛みが生じてきます、あの羽根は、造り物ですから…」
「では、羽根を外さなければ…?」
「ええ、でも、大丈夫ですよ、少しの間、外して休めば、取り除けます、
その後も時々は外して休んで頂ければ…」
「そうすれば、もう、彼はあんなふうに苦しむことはないんですね!」
「ええ」
「私にも彼の羽根を外すことはできますか…?」
「それは…」
「では、あなたが私たちの暮らしているところにきて頂けますか…?、
今のジュナには遠くに飛ぶことは無理なので…」
「ええ、ジュナさんの状態は解ります、ですが…、私が“そちら”に
行くことは…」
「どうしてですか…?」
私は、“そちら”を出てきたのです…、それに、私の姿は
この家の中でしか見えません、この体もまた造り物ですから…、そんな私が
そちらに行くことを神様は…、ですから、私は今は“そちら”には
行けないのです…」
「そうですか…、でも、それでは、どうすればいいのですか…?」

ミーメは、“天使”が三度目に入れ替えてくれたカップの飲み物を
飲んで、助けを求めるように“天使”を見つめました。
ミーメは、“天使”の言葉を待ちました。


ー“Ⅳ天使の苦悩10”へ続くー







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小さな羽根Ⅳ天使の苦悩8

『小さな羽根』


Ⅳ 天使の苦悩8


「あなたのお陰で私たちは幸せでした…、とても…」
「よかったです、あなたとジュナさんが幸せな時間を過ごすことができて…」
「神様に今の自分たちの姿が見えているのなら、見て頂きたいって
彼は言っていました」
「そうですか…」
「ええ…、あの日までは…、私も彼もそう思っていました…」

ミーメが今度は、ジュナが背中の痛みを訴え始めた日のことから話し始めました。
ジュナの痛みは一晩休んでも治まらず、次の日も、また次の日も彼は痛みを
我慢して仲間たちと一緒に仕事をし続けていたと、その痛みが日に日に強く
なっていることは自分が見ていて明らかで、彼がどうにかなってしまうのでは
ないかと心配で、仕事を休んでくれるように頼んだけれど、いくら頼んでも
彼は聞き入れてはくれず、仲間たちと一緒に仕事をし続けていたと…。
そして、とうとう、彼は痛みに耐えられなくなり倒れてしまい、その時に初めて、
彼の右の羽根の根元のところが赤く腫れ上がっていることに自分は気づいたのだ
ということまで、息もつかずに話し続けました。

“天使は”、ミーメの話が一段落すると、カップの飲み物を新しい物に入れ
替えてくれました。
ミーメは、“天使”にお礼を言って、その飲み物を一口飲みました。


ー“Ⅳ天使の苦悩9”へ続くー







小さな羽根Ⅴ天使の苦悩7

(これは物語です)

『小さな羽根』


Ⅳ 天使の苦悩7


「ミーメは何処へ行ったのかしらね…」
「ジュナのことをお願いって言われたけど…」
「もう一度ジュナを治してもらえるように頼みに行くって…」
「また遠くに…?」
「ええ、またジュナが仕事をできるようにって…」
「ジュナは、そんなに仕事がしたいのかなぁ…?」
「みんなと一緒に仕事ができていたから、ジュナは痛みも我慢てきたって、
ミーメが言ってたわ」 
「ジュナは…?、どうしてるんだ…?」
「今は…、静かにしているわ、まるで力を貯えているみたい…」
「きっとジュナはちゃんと解っているのよ、ミーメが何処へ行っているのかを…」
「そうか~、ジュナもミーメも凄いよなぁ」
「そうよね」

ミーメは、ジュナと一緒だった時のように、金色の光の中を抜け、
銀色の光の中を抜け、遠く遠く飛び続けていました。
やがて、青い空と緑と土の大地が見えてきました。
ミーメは、あの時と同じように緑と土の大地に降り立ち、ジュナと一緒に歩いた
大地を、一人、ずっとずっと歩いて行きました。
懐かしい家の前に辿り着きました。
ジュナがやっていたようにノックをすると、あの日と同じように、
『名前のない天使』が出てきてくれました。

「ミーメさん!」
「お久しぶりです」
「お元気ですか…?、ジュナさんは…?」
「それが…、今日は、ジュナのことで伺いました」
「そうですか…、とにかく、中に入って下さい」
「ありがとうございます」
「さぁ…、どうぞ」

ミーメと“天使”はテーブルに向かい合って座りました。

「話して下さい」
「ええ…」

ミーメは、あの日二人で仲間たちのところに帰って行ったあとのことを話しました。
仲間たちがジュナの美しさに驚き憧れてくれたこと、彼は仲間たちと
同じ仕事をできるようになり、仲間たちより速く飛べるようにもなって、
みんなに頼られるようになったこと、みんなの仕事まで引き受けるほどに
なっていたこと、そして、仕事が終わったあとは、みんなと遠くに遊びに行き、
遅くなるまで帰らない日もよくあったことを…。

“天使”は、そこまでの話を聞くと小さく息を吐きました。
ミーメは話を止め、“天使”を見つめました。。

「ごめんなさいね、お話を止めてしまって…」
「いいえ…」
「たくさん話して下さって…、喉がかわいたでしょう…」

“天使”は、飲み物の入ったカップをミーメの前に置いてくれました。
ミーメはお礼を言って、カップの飲み物を少し飲み、もう一度、
向かい合っている“天使”を見つめました。


ー“Ⅳ天使の苦悩8”へ続くー









小さな羽根Ⅴ天使の苦悩6

『小さな羽根』


Ⅳ 天使の苦悩6


「ジュナはどう…?、あんなに腫れ上がっていたんだから、痛かったでしょうね、
ジュナ、よく我慢してたわね」
「みんなと同じ仕事ができるようになって、みんなに頼ってもらって嬉しかったのよ」
「だから我慢ができたのね、見ていたあなたも辛かったでしょう…」
「ええ、でも、私は…」
「もう、無理させちゃダメよ」
「えっ…?」
「だって、造ってもらった羽根でしょ、ジュナの羽根」
「だけどね…」
「ジュナはよく頑張ったわよ、もう、ゆっくりさせてあげてね」
「でも…、それじゃあ…」
「大丈夫よ!、これからはジュナの分もみんなで頑張るから!」
「でも…、あのね「もちろん、あなたも仕事のことは気にしないでね!」

「仕事は僕たちで頑張るから、ジュナは無理しなくていいよ!」
「ああ…、ありがとう…」
「ジュナには今まで助けてもらったからね!」
「ああ…」
「だから、これからは僕たちで頑張るよ!」
「えっ…?」
「大丈夫だよ!、安心して!」

仲間たちは、ジュナとミーメに優しさや励ましのつもりで声を掛けてくれました。
でも、こんな仲間たちの言葉は、ジュナとミーメの心を優しく静かに傷つけ、
追い込んでいきました。

「ミーメ、僕は、異物の痛みに負けてしまったよ…」
「いいえ、あなたは、とても頑張っていたわ」
「でも、こうして寝込むことになった…」
「仕方ないわ、こんなに腫れ上がっているんだもの」
「でも…、これが新たな痛みなら…、僕は…」
「あなたはよく我慢したわ!、みんなだって…!」
「みんなは、僕にはもう仕事は無理だと思ってる!」
「そう…、かしら…」
「君だって、不安に思っているんじゃないか…?」

ジュナの言葉で、また不安に支配されそうになっている自分の心に気づき、
ミーメは、はっとしました。

ミーメは、いつのまにか眠ってしまっているジュナのことを優しく見つめました。
ミーメのその瞳には、また、強い光が宿っていました。


ー“Ⅳ天使の苦悩7”へ続くー










小さな羽根Ⅳ天使の苦悩5

(これは物語です)

『小さな羽根』


Ⅳ 天使の苦悩5


「あら、ジュナ、今日は、ずいぶん早いのね」
「ああ…」
「今日は、もう、何処にも行かないの…?」
「ああ…、行かないよ」
「どうしたの…?」
「ちょっと背中が痛くて…」
「大丈夫…?」
「大丈夫だよ、少し休んだら治るよ」
「きっと張り切り過ぎたのよ」
「そうだね」
「今日は、ゆっくりしていたらいいわ」
「ああ、そうするよ」

その日、まだ夜の浅いうちに帰ってきたジュナは、日が経つに連れ、
早い時間に帰ってくるようになっていきました。
ミーメは、ジュナの体に異変がおきていることを感じ始めました。

「ジュナ…、しばらく仕事は休んで…!」
「これくらいのことで休んでいられないよ」
「でも…、辛そうよ、お願い、無理はしないで!」
「大丈夫だよ…!」

ジュナもまた、自分の体の異変に気づき始めていましたが、それを振り切る
ように、ミーメがどれほど頼んでも仕事を休もうとはしませんでした。

「これが、神様がおっしゃっていた新たな痛みなら、僕は耐えなきゃ
ならないんだ!、僕には耐えられる!、大丈夫だよ!」

一緒に仕事をしている時も、食事をしている時も、二人で休んでいる時も、
ミーメは、ずっとジュナを心配していました。
魂を抱いて“エデン”へと飛び続けるジュナを止められないまま、ずいぶん時が
過ぎました。

「ジュナ…、お前、本当に大丈夫なのか…?」
「大丈夫さっ」
「凄く辛そうに見えるけど…」
「何でもないよ」
「いや、今日は、早く休んだ方がいいんじゃないか…?」
「そうよ、ジュナ…、ミーメも心配そうよ…」
「大丈夫だよ、あともう少しだから…」

ジュナは、仲間たちの前では、痛みの辛さを出さないように
していましたが、あんなに幸せそうだったジュナの笑顔は徐々に消え、
その顔はどんどん苦痛にくもっていきました。
仲間たちから見ても、ジュナの辛さは日に日に明らかになっていきました。

「大丈夫だよ、これは、僕が乗り越えなきゃいけないことなんだ!」

そう言って倒れ込んでしまったジュナの背中は、右の羽根の根本のところから
赤くなって、大きく腫れ上がってしまっていました。
それを目にしたミーメは、自分だけでは動かせないほどになってしまった
ジュナの体を、仲間たちに手伝ってもらい、休める場所に連れて行きました。

「もう、無理よ、ジュナ…」
「わかったよ、ミーメ…、ごめん、みんな…、ありがとう…」


ー“Ⅳ天使の苦悩6”へ続くー









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