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ショートストーリー13どろぼうさん

『どろぼうさん』

傘立てには5本のビニール傘が立ててあります。
その日は、朝は晴れていたのに、夕方に急に雨が降ってきました。
冷たい雨でした。

男の人が一人、傘立ての所に走って来ました。
そして、ビニール傘をさして行ってしまいました。
この人、実は、傘立てに傘を立ててはいませんでした。
この人は、傘を持って来てはいなかったのです。
「夕方ぐらいから雨が降ります」
そう伝えていた天気予報を聞き逃していたからでしょう。
だけど、雨に濡れるのが嫌で傘立ての一番手前に立ててあった誰かの
ビニール傘をさして行ってしまいました。
「みんな同じビニール傘だ、持って行ってもわからないだろう」

次に女の人が傘を取りに来ました。
この人は、天気予報を聞いて、ちゃんと傘を持って来ていました。
「あら…?、私、一番手前に立てたわよね…?」
その人は、ちょっとそう思いながらも、二番目の所に立ててあった
ビニール傘をさして行ってしまいました。
「誰かが動かしたのかも知れないわ、みんな同じビニール傘だし」

次にまた違う男の人がやってきました。
この人も自分のビニール傘を取りに来ました。
「あれ…?」
その人もやっぱり少し思いながら、みんなと同じビニール傘をさして
歩いて行きました。

こうして、傘立てに自分のビニール傘を立てていた四番目に来た人も
五番目に来た人も、同じビニール傘をさして行ってしまいました。

傘立てのビニール傘は、もう一本もなくなりました。

しばらくして、男の子がやって来ました。
「あれ~、僕の傘がない、どろぼうさんがいたのかなぁ…?」
男の子は、ママに教えてもらって、ちゃんと傘を持って来ていたのに…、
仕方なく、冷たい雨に濡れながら走って帰りました。

どろぼうさんはいましたよね!
さて、どろぼうさんは、天気予報を聞き逃して、傘を持って来て
いなかった男の人だけだったのでしょうか…?


-おわり-








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物語 手のひら9

(これは物語です)

『手のひら』9

「アンドロイドヘルパーのご利用ありがとうございます」
夕方の支援が終了した頃、玄関の扉がノックされました。
『あっ、きた…』

「お願いします、玄関を開けて下さい」
私は、支援が終わったばかりで、まだ私のそばにいたミュウさんに
声をかけました。

○○○の社員の女性がリビングに入ってきました。
女性はおじぎと相変わらずの笑顔の後に、言葉を続けました。
「契約が終了致しましたので、アンドロイドヘルパーを引き取り
にまいりました」

私は、部屋に戻っていたミュウさんに声をかけました。
「お願いします、ミュウさんの部屋を片づけて下さい」
「はい、解りました。」

「いかがでしたでしょうか…?、1週間」
「はい、とても心が休まりました」
「そうですか、それはよかったです」
「アンドロイドヘルパーは、本格的にレンタルしたり、
購入したりはできないんてすか…?」
「ええ、今はまだ試作品の状態で…、それに今は、
飛びっきりのお金持ちにしかできません」
「そうなんですか…」
「いつか、世の中に受け入れられる日がくるように頑張ります」
「ぜひ、頑張って下さい」
「福祉用具として補助金も出るようになればと考えています」
「その日を楽しみにしています」

「ミュウさん、契約は終了です」
女性がミュウさんに声をかけました。
「解りました」
ミュウさんは、女性に促され私の隣にきて、あの笑顔で言いました。
「1週間ありがとうございました」
ミュウさんはいつものように私の頭に“ポン”っと手を置きました。
「ありがとうございました」
私も笑顔で言いました。

「ミュウさんの中のあなたのデータは開発に生かさせて頂きます、
ご利用ありがとうございました」
女性は、おじぎをすると、ミュウさんと一緒に玄関を出て行きました。
私はいつものようにリビングに1人残りました。

「こんばんは」
就寝の時間になって、いつものヘルパーさんが入ってきました。
そして、いつもの支援に戻りました。

私の頭には、ふわっとした手のひらの感触が残っています。

ー“手のひら”終ー










物語 手のひら8

(これは物語です)

『手のひら』8

私は、ミュウさんに声をかけました。
「お願いします」
ミュウさんはリビングに現れてあの柔らかな笑顔で聞きました。
「はい、どうされましたか…?」
「今から外出の支援をして下さい」
「はい、解りました。」
「今日は夕方の居宅の支援はキャンセルです」
「はい、解りました。」
「外出の準備をして下さい」
「はい」

ミュウさんと私は出かけました。
「お願いします、地下鉄に乗って●●●に向かいます。」
何度か行っているコースで、ミュウさんには登録されています。
地下鉄の乗り降りの車椅子の介助も、●●●までのアスファルトの道
での車椅子の介助も、段差や傾斜の車椅子の介助も、他の支援と
同じように、あらかじめ登録されていたデータと実際に介助して
もらって私が伝えた情報によって、スムーズにこなせるように
なっていました。
私は、危険を感じることなく●●●に着いて、洋服や小物、それから、
食材の買い物を済ませることができました。
店員さんに何かを訪ねる時は、ミュウさんに店員さんの所まで、
連れて行ってもらって、私が直接訪ねました。
私が自分で訪ねた方が、店員さんに私の思いが伝わりやすいと
思っている私には、そこは手伝ってもらう必要がありません。
私は自分で話したいのです。
ミュウさんは、決して、自分から私の前に出ることはありません。
私は落ち着いて買い物ができます。

振り返る人はなく、ミュウさんはすっかり人間に溶け込んで
います。
車椅子に乗っている私に小さな子が振り返り、不思議そうに
人間の私を見ていました。

「お願いします、買い物が終わったから、夕食を食べます」
私は、ミュウさんにをかけて●●●にある中華料理のお店に連れて
行ってもらって、中華丼を食べました。
ミュウさんは、食事の必要はありませんでした。

家に帰って、その日は少し早めに就寝の支援をしてもらいました。
「今日も1日ありがとうございました、おやすみなさい」
ミュウさんは、いつもの言葉の後に、いつものように私の頭に
手を“”ポン”っと置きました。
『やっぱり、何かあったかいなぁ…』

ー“手のひら9”へ続くー






物語 手のひら7

(これは物語です)

『手のひら』7

朝いつもの時間に目を覚ました私は、ミュウさんに声をかけました。
ミュウさんは、寝室の扉を開けて入ってきました。
「おはようございます」
ミュウさんがあの柔らかな笑顔で扉を閉めながら言いました。
「お目覚めになられましたか…?」
「はい、おはようございます」
「では、起床の支援を始めさせて頂いてよろしいでしょうか…?」
「はい、お願いします」
私は心から目覚め、1日を気持ちよくスタートすることができました。
『こういうことだったのかもなぁ…』
ミュウさんは、また手際よく支援を進めました。

その日のお昼の支援で、ポータブルトイレに座らせてもらった時、
少しお尻の位置がズレていて痛みを感じてしまいました。
私は、掃除をしているミュウさんに声をかけました。
「ミュウさん…、体を持って、お尻をもう少し左にズラして下さい」
「はい…、このくらいですか…?」
「もう少し…右に…」
「はい…、このくらいですか…?」
「はい、それくらいで大丈夫です」
お尻の位置はベストな位置に収まりました。
ベットから車椅子に移動してもらった時も同じように、お尻の位置を
ベストに直してもらいました。

ベットでの洗髪の支援の時、シャンプーをつけた後、頭をこする加減
が物足りなくて、頭を洗っているミュウさんに声をかけました。
「ミュウさん…、もう少し強くこすって下さい」
「はい、このくらいですか…?」
「痛たた…、もう少し…、弱くこすって下さい」
「はい、すみません、このくらいですか…?」
「はい、それくらいで大丈夫です」
ベストな加減になりました。

ある日の夕食にまたラーメンを作ってもらいました。
「ラーメンが食べたいです」
今度はそう伝えてだけで、あの日と同じラーメンを食べられました。

ポータブルトイレのお尻の位置も、車椅子のお尻位置も、洗髪の時の
頭をこする加減も、ベストになった日から、いつもベストです。
あらかじめ登録されていたこと以外にも、細かいことのベストが
増えていきました。

ミュウさんの支援は、支援の前の確認も、支援開始のタイミングも、
支援中のリズムも、支援終了のタイミングも、私の空気感に合って
いて、決して私の時間に食い込んでくることもなく、私は、支援中
は“支援の時間”として、気持ちよく受けることができました。

そして、1度登録されたことは、いつも完璧にこなすミュウさんは、
私にベストなヘルパーに成長していきました。
もちろん、支援中に恐怖などは、全く感じることはありませんでした。

ー“手のひら8”へ続くー











物語 手のひら6

(これは物語です)

『手のひら』6

アンドロイドヘルパーのミュウさんとの生活が始まりました。

ミュウさんは、登録された時間以外は充電部屋です。
「あなたの時間のお邪魔にならないよう、こちらで待機させて
頂きます、外出や緊急の支援が必要な時はお呼び下さい、
登録をさせて頂く必要のない支援の時は、名前を呼ばすに
“お願いします”と声をかけて下さい」
ミュウさんは部屋に戻りました。

ミュウさんが私のいるリビングに現れました。
「支援のお時間になりました、何をさせて頂きましょうか…?」
「夕食を作って食べさせて下さい」
「登録されているメニューから、冷蔵庫にあるものでお作り
しましょうか…?、予定しているメニューがありますか…?」
「ラーメンが食べたいです、私が作り方を言います」
「登録の必要はありますか…?」
「はい」
「1度名前を呼んで、作り方を伝えて下さい」
「ミュウさん、…」
私は、作り方を伝えました。
ラーメンは、思ってた以上に美味しくできていました。
食べさせ方も完璧にミュウさんに登録されていました。

「支援開始の時は、あなたのタイミングで声をかけて下さい、
予定時間から30分過ぎてもお声がかからない時は、
こちらから伺います、今日はそのことを聞いておられなかった
ので、開始予定時間に伺いました」
支援の終わりにミュウさんが言いました。

1日の最後の支援、就寝の時間になりました。
私は、ほぼ予定時間にミュウさんに声をかけました。
ミュウさんが、すぐに私のいるリビングに現れました。
「就寝の支援をお願いします」
「はい、解りました」
ミュウさんは、手際よく支援を進めました。
『やっぱり完璧に登録されてる』
車椅子からベットへの移動もふわりと完璧でした。

「今日1日ありがとうございました、おやすみなさい」
最後にミュウさんさんの手がポンっと私の頭に置かれました。
『あ…、これが、“頭ポン”…?、何かあったかいなぁ…』

ー“手のひら7”へ続くー









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