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彼女のストーリー14ボコボコ…、ボコボコ…

(これは物語です)

『ボコボコ…、ボコボコ…』

彼女は、まだ真っ暗な部屋のベットの上で目を覚ました。
ベットの横にある窓の外からは、激しい雨の音に混じって
“ガヤガヤ”と人の声が聞こえます。
『何だろう…?』
“ボコボコ…、ボコボコ…”
お風呂場の方から異様な音が聞こえてきます。
『えっ…、何…?、排水口…?、水、溢れてんの…?、何で…?』
彼女は、団地全体に放送されてる声に気づきました。
「…ました、避難して下さい…!」
『えっ、避難って…、何がおこってんの』
雨の音と、反響している音の広がりで、放送の内容がよく
聞こえませんでした。
『え~、どうなってんの~、何がおこってんの~』
真っ暗な家の中には彼女一人、それを彼女に教えてくれる人は
いませんでした。
“ガラガラガラ…、ゴロゴロゴロゴロ…”
リビングの方から物が動くみたいな音が聞こえ出しました。
ベットの上で体を動かすことのできない彼女に徐々に解ってきた
ことは、“自分は何か避難をしなければいけない危険な状況にある
けれど、誰にも気づかれていないかも知れない”ということでした。
『大きな声を出し続けたら、誰かが気づいてくれるかもしれない!』
今、自分を助けるための唯一の手段は、声を使うことでした。
「ワー!、ワー!、ワー!、ワー!、ワー!ワー!、ワー!…」
彼女は、一番大きな声が出せそうな発音で声を出し続けました。

『ああ…、ダメだ…、人間てこうやって死んで行くんかなぁ…』

“ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン”
「大丈夫ですか~!」
どれくらい経ったのか…、ドアを叩く音と声に彼女は応えました。
「大丈夫なんですが、何がおきているのかわからないんです!」
「鍵は開けられますか…?」
「私、ベットの上にいるんですが、自分で動けないんで、鍵を開けに
行くことができないんです、何がおきてるんですか…?」
「ちょっと待って下さいね」

彼女がここにいることに誰かが気づいてくれました。


-彼女のストーリー15
『コワイー!コワイー!コワイ…!』へつづく-













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彼女のストーリー13フルコースディナー

(これは物語です)

彼女はスカートをはいて、彼はスーツを着て、いつもよりもおしゃれ
して出かけました。
彼女と彼は、ホテルのフルコースディナーに…。

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました、こちらのお席へどうぞ」
ボーイは、車いすの彼女のために、テーブルの椅子を一つ抜いてくれました。
「ありがとうございます」 
二人は、とても気持ちよくテーブルにつきました。
テーブルには、ナフキンとナイフ、スプーン、フォークが二人分置かれて
いました。

注文した飲み物が運ばれてきました。
彼が二つのグラスを合わせて、一口飲んだあと、彼女の前に置かれたグラスを
彼女の口元に持っていき、彼女にも一口飲み物を飲ませてくれました。
「ああ、おいしい!」
彼女が言いました。
「そうか~」
彼は彼女に笑顔を向けて言いました。

何皿かの前菜が順番に運ばれてきました。
ボーイは、新しい料理をテーブルに置く度に料理の説明をしてくれました。
彼は、自分と彼女にナフキンをかけながら、彼女に料理の説明をして、
自分の前の料理をナイフとフォーク、スプーンを使って食べて…、
彼女の前の料理をナイフとフォーク、スプーンを使って彼女に食べさせて
くれました。
「これ、すごくおいしいね」
「うん、おいしいな」
「これ、なんやろな…?」
「トリフや」
「えっ、すごーい!」
「あっ、これ、ウニ入ってる!、おいしい…!」

前菜のお皿たちが片付けられ、スープが運ばれてきました。
スープのお皿には、透明な紙に包まれた薄いグリーンのスープがのっていて、
別に大きなクルトンがのったお皿が運ばれてきました。
「エンドウ豆のスープでございます、こちらのスープのお皿の紙を開いて
頂きまして、こちらのクルトンを入れてお召し上がり下さい」
ボーイが説明してくれました。
彼が自分の前のスープの紙を開いて、クルトンを入れて、スープをスプーン
ですくって飲みました。
「おいしい…?」
「うん、ちょっと熱いけど、おいしいな」
彼は、彼女の前のスープの紙を開いて、クルトンを入れて、スプーンを
使って彼女に飲ませてくれました。
「熱っ、これ、紙で冷めにくくしてあるんやわ!」
「そうか~、おいしいやろ」
「うん、おいしい!」

メインのお肉が運ばれてきました。
「やらかくておいしい…」
「うん」
彼は、彼女の前のお肉をナイフとフォークを使って食べさせてくれたあと、
自分の前のお肉を食べ始めました。
『何てきれいに食べる人なんやろう…』
お肉をナイフで切って、フォークを使って食べる彼を見て、彼女は思いました。
彼のナイフとフォークを使う姿、その手の動きは“スー、スー”と美しく
見えて、彼女は見とれてしまいました。

何種類かのおいしいデザートを食べて、二人で紅茶を飲んで、フルコース
ディナーの時間は終わりました。
「おいしかったね!」
「そやな!」


-おわり-





彼女のストーリー12ピアス

(これは物語です)

『ピアス』

「痛くない…?」
「大丈夫!」
「待って!、もうちょっと氷で冷やして!」
「わかった!」

「いくで!」
「うん!、いいよ!」

“パチン”

彼女の耳には結構大きめな音が届いて、ピアスの穴が開きました。
「大丈夫やったやろ…?」
彼が彼女の耳を綿棒で消毒しながら言いました。
「うん!、ちょっとチクってしたけど、思ったより痛くなかった!」
彼女は、笑顔で彼に応えました。

彼女は、友達の介助者として彼と出逢いました。
一人暮らしを始めたばかりの頃、彼女はその友達とカラオケに行ったり、
ごはんを食べに行ったり、お互いの部屋でおしゃべりをしたりよくしてました。
そこに彼が介助者としてよくきていたのです。
この頃の彼女は、家にヘルパーさんにきてもらっていましたが、電動を運転
して一人で外出することもありました。
だから、彼女と彼と友達との三人のメンバーになることが多くあったのです。
『あっ、またこの人』
彼に対する彼女の印象は、最近はそんな感じでした。
『あっ、また会えた!』
何度か会って話をしたりするうちに彼女の彼への印象は、少しずつ変わって
いきました。

「俺と一緒に生きてくれ」
彼女は、彼からこんな言葉を言われました。
「えっ…、付き合うってこと…?」
彼女は、その言葉に驚いて彼に聞き返しましたが、返事をすることは
できませんでした。

彼女だって、今まで男の人と付き合ったことがない訳ではありませんでした。
だけど…、少しでも付き合っていることが親にわかりかけてしまう親は、
何だか、大騒ぎをするのです。
「車いすのあんたがそんなこと…、自分のことが全部できるようになって
からにしなってからにしなさいう!」
『じゃあ、一生、無理やん』
彼女は思いながらも、言っても伝わらないだろうと黙っていました。

『前の彼氏の時も面倒くさいことになったしなぁ…』
そんな思いが彼女の心を止めていました。
だけど…、彼に会う度に彼女は彼に惹かれていきました。

彼と二人でも会うようになっていたある日、彼女の買い物の荷物を両手
いっぱいに持って彼女の前を歩いていた彼が突然、そのまま顔から
こけてしまったあと、何もなかったように立ち上がり、また荷物を持って
普通に歩き出した姿を見て彼女は決めました。
『この人と付き合ってみよう!』

「私、ピアス開けてみたい!」
彼女は彼に言いました。
「俺が開けたるわ」
「大丈夫…?」 
「うん、ピアッサーでやったら大丈夫や!」

『今度は、ちゃんと親にも話そう…、あの頃よりは、私の気持ち、
聞いてくれるよね…、きっと大丈夫…!』
『このまま穏やかに、彼と時間を重ねていけますように…』
彼女は“パチン”の音に心から願いました。


-おわり‐













彼女ストーリー11メリーゴーランド

(これは物語です)

『メリーゴーランド』

彼女は幼い頃、メリーゴーランドに乗せてもらったことがあります。
彼女と同じ歳の妹は一人でかっこよく馬に乗っています。
妹とは違い、体の不自由な彼女は馬車に乗せられました。
彼女の隣にはお母さんが座って体を支えてくれました。

キラキラした音楽と光の中、妹はかっこよく一人で馬に乗って、
彼女とお母さんの乗っている馬車に向かって手を振っています。
『いいなぁ…』
幼い彼女には、お姫様みたいな馬車に乗っている自分よりも、
一人で馬に乗っている妹がうらやましく見えました。

おとなになった彼女はふと思いました。
『メリーゴーランドに乗りたいなぁ…』
だけど今度は、妹が一人で乗って手を振っていたあの馬じゃなくて、
お母さんと乗ったお姫様みたいなあのキラキラした馬車に…。

おとなになった彼女の隣には、お母さんではなく、愛おしい彼が
座ってくれるでしょう…。
キラキラした音楽と光の中、手を繋いでニコニコお姫様と王子様
みたいに馬車に乗る二人の姿が彼女の心には見えています。


-おわり-











彼女ストーリー10彼女のはと時計

(これは物語です)

『彼女のはと時計』

彼女は、彼と一緒に彼が昔お世話になった方のペンションに
泊まりに行きました。
木造りの素敵なペンションで、広いリビングには暖炉があり、
その壁には昔ながらのはと時計が掛かっていました。
『いいなぁ…』
彼女は、彼と一緒に温かなおもてなしを受けながら、はと時計
に心惹かれていました。
“ポッポー、ポッポー、ポッポー、ポッポー、ポッポー”
小さな扉からはとが出てきて、時間の数だけ鳴いて時間を
知らせてくれるのです。
はと時計が掛かっているリビング以外の部屋にいても、
その優しい鳴き声は聞こえてきました。
『ああ…、いいなぁ…』
彼女は、泊まっていた2日間、木造りのペンションや温かい
おもてなしと共に、はと時計のその声に彼と一緒に心癒やされ、
日常のストレスから解き放されていました。

彼女も彼も大好きになったペンションから帰る日がやってきました。
「ありがとうございました、お世話になりました」
「またおいでや」
「はい、またきます」

「はと時計ほしいなぁ…」
彼女は、帰り道彼に言いました。
「えっ、今から買いに行くの…?」
彼は少し驚いたように彼女に聞きました。
「うん、あそこの時計屋さんにあったらほしいな」
「しゃあないなぁ…、ちょっと見に行ってみよか」
彼は、彼女の車いすを押して時計屋さんに向かってくれました。

今、彼女の家のリビングには、可愛いはと時計が掛かっています。
ペンションにあったモノのように“昔ながら”といった感じでは
ありませんが、時計屋さんで出逢って、その優しい声を聞いた時、
彼女は彼に言いました。
「これがいい…!」

彼女のはと時計は、いつもはとが両側に1匹ずついて、時間になる
と真ん中の小さな扉が開いてもう1匹はとが出てきて、3匹揃って
時間の数だけ鳴いて時間を知らせてくれます。
“ポッポー、ポッポー、ポッポー、ポッポー、ポッポー”
優しいその声は、ペンションにあった時計と同じように、どの部屋
にいても、彼女に時間を知らせてくれて、彼女の心を癒やしてくれて
います。
『あっ、もう時間だ』
下を向いて、スマートフォンでお話を創ったりしていても、彼女の
はと時計は、ちゃんと彼女に時間を知らせてくれます。

「はと時計どうや!」
部屋に入ってきた彼が、ヘルメットを取りながら聞いてくれました。
「うん、すごくいい感じ!」
車いすに座っている彼女は、ニコニコ応えました。


-おわり-












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