ショートストーリー22
『ぼくのお願い』
うさぎのましろには足がありません。
だから、いつも地面にコロンと転がります。
「きっと神様が忘れたんだ」
小さいましろはそう思っていました。
「ぼくも地面に足をつけてピョンピョン歩いてみたいなぁ…」
小さいましろは、毎日毎日神様にお願いしました。
「ぼくにも他の子と同じ足を下さい」
ましろは、少しずつ大きくなっていきました。
毎日コロンと地面を転がり草や土の匂いに包まれて、コロコロコロコロ地面を
転がって過ごしていました。
大きくなったましろもやっぱり毎日神様にお願いしました。
「ぼくにも足を下さい」
いつものように草と土の匂いに包まれて目を覚ましたましろは『何か変』と
思いました。
起き上がってみると、お尻に伝わってくる草や土の感触が何かおかしいのです。
「あれ~、お尻が…」
ましろは、しばらくお尻のところをじっと見ていました。
「えっ、足がある!」
ましろは、地面を歩いてみました。
少しずつ足を前に出し、ピョン…、ピョン…、歩いてみました。
「凄い!歩いてる!」
ましろは、神様にお礼を言いました。
「神様、ぼくの願いを叶えて下さってありがとうございます」
ましろは、ピョン…、…ピョン、中々上手く歩けません。
ましろは、ピョン…、…ピョン、歩いてる時にふと思いました。
「何だか、コロコロ地面を転がってたころの方が早く動けたなぁ…、何だか、
足がないころの方がお尻にもっと草や土が当たって気持ち良かったなぁ…」
生まれてからずっと足がなくて、歩くことのなかったましろには、
足を一歩ずつ前に出したり、歩く時に必要なこつをつかむのは、大変なことでした。
それに足があったら、前のように上手くコロコロできませんでした。
ましろは、コロコロ転がって行きたい所にすぐ行けたり、お尻にもっと草や土を
感じて過ごしていたころの方が幸せだったと感じました。
ましろは、また神様にお願いしました。
「神様、せっかくお願い叶えて下さったのにごめんなさい、ぼく、やっぱり足は
いりません、ぼくをもとに戻して下さい、お願いします」
神様は、優しくニッコリ微笑んで、ましろのお願いを今度はすぐに叶えて
下さいました。
ましろの足はまたなくなりました。
ましろは、また、コロコロ転がって、お尻に草や土を思い切り感じながら
過ごせるようになりました。
-おわり-
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