(これは物語です)
『はなちゃんのかさ』
「あっ!、雨」
はなちゃんは大きな声で言いました。
「ママ、あのかささして行くね!」
「いいわよ」
はなちゃんは、かさをさして少し灰色の外に出ました。
ママに買ってもらったピンク色のかさ、はなちゃんはピンクのランドセルを
背負ってピンク色のかさをさして元気に歩いて行きました。
「はなちゃん、ピンクのかさランドセルと一緒でかわいいね!」
はなちゃんのお友達がはなちゃんに駆け寄ってきました。
ピンク色のかさは嬉しくて、思いっ切りピーンってしました。
「ありがとう…、だけどね、フリフリじゃないでしょ」
はなちゃんの思わぬ言葉にピンク色のかさはシューン…ってしてしまいました。
『はなちゃん、気に入ってくれてたんじゃなかったんだ…』
学校に着いて、ピンク色のかさは、他のかさたちと一緒にかさ立てに
立てられました。青、黒、黄色、赤…、色々な色のかさが立てられていました。
ピンク色のかさは、ずーっとずーっと立っていて、いつの間にか雨が
止んでいました。ピンク色のかさは、ちょっと心配になりました
『雨、止んじゃった…』
何度目かのチャイムが鳴って、たくさんの子供たちがワイワイ出て来ました。
ピンク色のかさは自分と同じ色のランドセルを、はなちゃんを探しました。
『あれ…?』
いつまで経ってもはなちゃんは見つけられませんでした。
『やっぱり…、気に入ってないから置いて帰っちゃったのかなぁ…?』
かさ立てのかさたちは、閉じられたまま一本ずつなくなっていきました。
やがて、オレンジ色の夕焼けは消え、真っ暗な夜になりました。
学校のかさ立てには、夜の色と同じ真っ黒のかさとピンク色のかさだけに
なってしまいまいました。『本当に置いて行かれちゃった…』
青い空の朝が来ました。昨日とは違って、子供たちは誰もかさ立てには
近づいてきませんでした。
「ゆいちゃん、あった!」
大きな声が聞こえてきました。
「よかったね!、学校にやっぱり忘れちゃってたんだね!」
「うん!」
「きのう、雨止んじゃったから忘れちゃったんだよ!」
「そうか~、おうちで探してもなかったからなくしちゃったかと思った」
「かわいいかさなのに、なくなっちゃたら悲しいもんね」
「うん、そうだよね」
『ちゃんと探してくれてたんだ!、かわいいかさだって!』
ピンク色のかさはとても嬉しくなって、かさたてに立ったまま
思いっ切りピーンとしました。
そして、ゆいちゃんとお話しながら、教室に向かうはなちゃんのに
小さく言いました。
『雨は降ってないけど、今日は一緒に帰ろうね!』
-おわり-
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