（これは物語です）

「物」

音が出て光を放ちスイッチオンで走る
大きなパトカーのおもちゃは
小さくて音や光の出ない
小さな車のおもちゃたちの憧れでした。

大きなパトカーのおもちゃが
おもちゃ箱の中でいばっていても
誰も何も言いません。

おもちゃたちのいる家が
引っ越しをすることになりました。
小さな車のおもちゃたちは捨てられました。

ゴミを燃やすところに運ばれた
おもちゃたちは驚きました。
自分たちのいる壊れたおもちゃの山に
あの憧れていた大きなパトカーのおもちゃが
一緒に捨てられていたのです。

パトカーのおもちゃは
「壊れたらみんな同じなんだなぁ･･･」
小さな車のおもちゃたちを見て
呟きました。

やがて
みんな共に炎の中に入れられて
燃えて灰になっていきました。

みんな同じです。

－“みんな同じ６”へ続く－

「星」

夜空を見上げると
星は同じ場所で
輝いています。

みんな
夜空を見上げて
憧れています。

星は
一つ一つ
何億光年も
離れています。

一つ一つで
消滅したり
一つ一つで
燃え尽きたり
一つ一つで
消えています。

地球から
大きく輝いて見えている星も
小さくやっと見えている星も
みんなみんな宇宙の星です。

みんな同じです。

－“みんな同じ５”へ続く－

(これは物語)

「鳥」

タカは
大空を我がもの顔で飛んでいます。

確かに大きな翼を広げ
雄大に大空を飛ぶその姿は
どんな鳥にも劣っていません。

タカは
どんな鳥よりも自由に
大空を飛び回っています。

命を繋ぐために
自分よりも小さな鳥たちを
襲うこともありました。

タカは
空腹を感じ
小さなスズメを
追いかけました。

スズメは
命を守るために
タカから逃れようと
必死に翼を羽ばたかせました。

タカは
逃げても逃げても
どこまでもどこまでも
スズメを
追いかけてきます。

『ど～ん！』
鉄砲の大きな音して
『キシキシ･･･』
鳴き声と共に
タカは
地面に落ちていきました。

必死に逃げていたスズメは
ホッとしてゆっくりと
翼を動かし始めました。

『ど～ん』
鉄砲の音が聞こえて
『チュンチュン･･･』
鳴き声と共に
スズメは
地面に落ちていきました。

二羽は
空から落ちて土の上に
重なり合って転がりました。

二羽は共に土に返っていきました。

みんな同じです。

－“みんな同じ４”へ続く－

（これは物語です）

「空」

青い空
夕焼け空
夜の空
みんな同じ

みんな違う色は
みんな同じ空
みんな空の色

雨　雪　雷　風
みんな同じ
空からやって来る

遠い国も近い街も
知らない国も知らない街も
みんな同じ空でつながっている
戦争をしている国も平和な国も
みんな同じ空でつながっている

どこまでもつながる広い空
みんなみんな同じ空

みんな同じです。

－“みんな同じ３”へ続く－

(これは物語です)

「花」

黄色いタンポポは
部屋の中のガラスの花瓶に
美しい姿で咲いている
真っ赤なバラのことを
羨ましく思っていました。

黄色いタンポポは
「あんなふうに　綺麗に咲きたかった‥」
毎日まいにち真っ赤なバラを見ては
そう思っていました。

やがて
ガラスの花瓶の真っ赤なバラは
枯れてしまいました。

２つの花は
共に土に埋められました。

黄色いタンポポも
真っ赤なバラも
同じ土になりました。

みんな同じです。